ENo.0206　モニカ・フランクリン

　死んだ、と思った。
　そのはずだった。

「…………」

　目を覚ます。
　自分の部屋だ。まだ暗い。時計を見るまでもない、二度寝も三度寝も決め込めるであろうそんな時間のはずだ。
　布団を被って、また転がる。目を閉じても、でも、さっき見た夢が、
　夢じゃない出来事が瞼の裏に焼き付いている。

　いつか見た夢と同じように、私は、撃墜された。機体を壊されて、もう避けることなんてできなくて、薄い装甲ではこれ以上耐えられなくて、あとは潰されるだけ。のはずだった。
　そうして死んでいた、はずだった。

「…………なんでだろう」

　あんなのは見たことがない。
　分からない。よくあることなのだろうか。聞いたことがない。
　自分が死ぬ、殺される、という段になって、見知らぬ機体が滑り込んできて攻撃を受ける。などという話は。
　分からない。キリトさんに訊いてみても明確な答えは得られなかった。
　結局あの機体は、誰のものとも分からなくて、操縦棺からも誰が見つかることはなかったらしい。未確認機。ということだろうか。
　誰に訊いても何も分からないけど、でも、

「助けてくれた、んだよね……」

　それは、間違いないと思う。あれは。
　私が死にそうになって、というか、死ぬというところを、庇ってくれたのは間違いないと思った。
　私の知らない、中二脚の機体。ボロボロで。どうして動いていたのかも不思議なくらい、でも、私のヘリオトロープもその時はもっとボロボロだったしある意味お揃いだろうか、と思うとちょっと愉快な気持ちにもなったりする。
　全然笑えないのかもしれないけど。

「…………」

　でも。あの場で私が死ぬはずだったことに代わりはなくて、結局死なないから、みたいな、進むしかない、みたいな、敵を倒し、殺していくことにしか価値を見出だせない、みたいな、そんな戦い方に。
　いつかしっぺ返しが来ることも、なんとなく分かったような気はするけど、

　でも、今更それを変える方法が、私には分からないんだなと思った。

ひとりでもユニオン。