ENo.0277　カラーガタ

女性体は筋力こそ足りないが、年齢を制限すれば軽く、バケツーー棺の中の隅々まで届かせることに不自由がない。

けれど、メッセージに現れたその女性は、身体をそういった理由で選んでいるのではないようだった。
超重領域、その機体状況と挙動を使いきろうとしていた頃は、私も重量を増すために増槽があれば良いのに、と考えてはいたが、航空母艦が戦闘機に給油するタンクのようなものを肉体に置いたまま戦闘に出る人が居る。
わざわざワンオフであるだろう筈のパイロットスーツのジッパーが上がりきらないのだから、パイロットスーツが出来たより後に、その増槽は敷設されたのだと思うのだが……。

ふに、と幼い形を少し触る。
何故、彼女は軽量化しないのだろう？

聞いて良いことかどうか、暫く考えたが判断はつかなかった。

まだ死ぬ気はないと言っていたから、聞いて良いかどうか、わかった時にしようと考えて、保留するということを憶えたことを自覚した。

それは不思議と擽ったく、ふふ、と独り笑いを誘った。

時間と一体だった青年は、死を確定され生まれ落ちることに恐怖して蹲るだけの少女に変ってしまった。

弱く弱く、ただ弱い。

恐れを知って見つめるモノから殺すものに変質した。

それは生の本質。
死ぬという必定が生であり、死ぬことの原因は生まれたことに他ならない。

死なないために殺す。

無自覚に喰らう塞がれた目は開き、その目が捉えたモノを殺して食べる。
それは生物としての個の確立であり。

アートマンの細胞としての霊格の確立だ。

死出の径は、大丈夫、誰もが往くのだ。

誰や先我や先と旋律は歌うだろう。