ENo.0261　Solitus

カナエの挑戦は、結論から先に述べると成功だった。
マギカマキナの歯車を試しにソリトゥスにはめ込んでみた結果、ソリトゥスはいつもどおりに――もしかしたら、いつも以上のパフォーマンスを見せた。
ただ、歯車の状態のままでソリトゥスの体内にはめ込んでも、ソリトゥスへの負担が大きいらしく、彼の身体はすぐに軋むような音を立て始めた。
どうやら、ソリトゥスの身体に負担をかけることなくマギカマキナの歯車を埋め込もうと思うと、そのままではいけないらしい。

「……ってことは、今後はそれが課題になってくるよなぁ……」

手に持ったスパナをくるくると回しながら、椅子の背もたれに体重を預けて溜息をつく。
おそらく丁度いい方法は歯車をパーツの中に入れてしまう方法だが――歯車を入れたときにパーツが正常に動くかどうかという問題も発生してくる。
日数もそれほど残されていないだろうし、これは新たなパーツの開発を急がないといけないのかもしれない。

――やれやれ。予想はできていたが、なかなかに苦労しそうだ。

もう一度溜息をついて、カナエはテーブルに突っ伏したまま、小さく寝息をたてているソーナへと視線を向ける。
つい数分前までは真剣そうな顔で本を読んでいたのだが、どうやら途中で眠気に負けたらしく、今では気持ちよさそうな寝息を立てていた。
穏やかな相方の様子に表情を緩ませたりしながら、カナエはソーナの長い髪を優しく撫でる。

「……ソナもソリトゥスと一緒に旅をしたいっていってたし……頑張らないと、ね」

小さく呟かれた言葉はカナエが自分で思っていた以上に、穏やかで、優しくて――。
そんな声も出せるのか、と自分のことなのにカナエは思わず小さく吹き出してしまった。
窓に切り取られた空は少しずつ――けれど確かに、夜明けへと向かっていた。