ENo.0649　アキラ・ハリアエトゥス

企業連盟が“霜の巨人”に敗北してから4日。俺は、ガレージを放棄していた。

住み慣れたガレージではあったが、そうせざるを得なかった。
寒波が更にきつくなり、あのガレージでは遠からず凍死していただろう。
今の俺はハイドラを運ぶためのトラックに積み込んだプレハブに防寒処理を施し、簡易的なシェルターとして生活している。

「断熱材びっちり貼り付けたからな……流石にもう隙間風もないか」

最低限生活に必要な物とハイドラ用の物資を積めるだけ積み込み、荷台の空きスペースにプレハブが鎮座している。
“パンディオン”が比較的小柄で助かった。大型のハイドラだったらプレハブを置く場所がなかっただろう。

この間は朝起きたらガレージ内の機材が幾つか凍りついてダメになっていて、危うくそのまま俺も凍死するところだった。
そこから全力で室内を温め、生きている機材をトラックに積み、出撃には間に合わせた。
お陰で僚機への連絡もままならず、出撃先の意思決定だけするので精一杯だった。

「企業連盟が解体、バルーナスがレジスタンスに、霧をプラズマに変えるとんでも技術……」
「ほんの短い間に情勢が大きく動いたもんだな、本当」

トラックの運転席でラジオを聞きながらぼやく。
俺は今、次の戦場の近くまで移動している。とりあえず当面は、レジスタンスに肩入れしようかと思っている。
僚機からの返答はいつも通り簡単なもので、ミッションDで異論はないとの事。
あちらも何かしら思惑はあるらしいが、異議がないということはここでどうこう動くようなことではないのだろう。

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バックミラーからとうとう、廃墟街の輪郭も見えなくなった。
ここに流れ着いてから三ヶ月、愛着のある場所だったが……もう戻れはしないだろう。霜の巨人を倒さなければ。

少なくとも、アレを倒さなければこちらの未来もないのだ。
『種子』が危険ならその後でそちらが敵になるのかもしれないが、今の脅威は霜の巨人。


そんなことを考えている内に野営予定地が見えてきた。トラックを停め、プレハブの暖房を焚く。
燃料も補給しなければならない。……できるだけ早く巨人を倒さなければ、こちらの財布が枯渇しそうだと思った。

ユニオンに加入していたほうがいい、と聞いたアキラ・ハリアエトゥスが設立したユニオン。
正式に届け出は出しているがメンバーは一人であり、いわゆるペーパーユニオンである。

加入希望者は一応募集しているが予定はない。