ENo.0261　Solitus

その日のカナエは、ソーナから見ていつもと違うように見えた。
普段はソーナとのやりとりに使っている通信端末で、誰かと連絡を取り合いながらソリトゥスのパーツ一つ一つを選んでいくその姿は、ソーナがカナエと共に行動し、彼と共に生活を送るようになってからはじめて見る姿だった。
どこか真剣な目で、けれど楽しそうに鼻歌を歌い、普段ソリトゥスに積んでいるパーツを降ろしたかと思えば、箱の中に入れておいたパーツを分解してソーナが見たことのないパーツを作ったりしている。
竜の翼と腕を一体化させたような形のパーツ――おそらく腕だろう――をソリトゥスに取り付けると、カナエは小さく頷いてから、ぱっと振り返ってソーナのほうを見た。

「ソナ。このリストにあがってるパーツ、全部マーケットで購入手続きしてきて」
「……これ……全部？」
「うん。資金は貯め込んでおいたおかげで、余裕で足りると思うから。それ全部、朝一でソリトゥスに積み込むよ」

カナエが差し出してきたメモには、マーケットで販売されているらしいパーツの名前がずらりと並べられている。
合計6つのパーツの名前の横には種類も小さくメモされているのだが、その中にはカナエもソーナも今まで触ったことがないものも含まれている。
リストアップされたパーツの名前と種類をじっと見つめたあと、ソーナはゆっくりと顔をあげてカナエのほうを見た。

「……テイ……何しようと、してるの？」

ぽつり、と呟くように――囁くように、口から溢れた言葉。
誰かとの通信を一度中断したカナエは目をぱちくりとさせてから、目を細めて猫のようににんまり笑った。

「ちょっと、ね。他のハイドラライダーたちの大掛かりな作戦に参加することにした」
「……テイが？……珍しい」
「話を聞いた感じ、なんだか面白そうだって感じたからさ。面白そうなことにはガンガン乗っていきたいでしょ？」

くつくつと小さく肩を揺らして言葉を紡いだカナエは、そのまま楽しそうに唇の端を持ち上げた。

「楽しみにしててよソナ。ソリトゥス、すっごく面白いことになりそうだからさ？」

弾むような声色でそういったカナエの様子は――どこまでも、明るかった。