ENo.0505　セイラン＝ルーデ

大規模作戦へと参加の意を表明した私は、会議の場においてほとんど口を出すことなく、交わされる討議の内容を把握することに注力していた。
多くのライダーが顔を合わせる場において、主導権を握るものはそう多くはない。それだけの知識や力を持つ者は限られており、彼らに基本方針を委ねるのが最も成功率が高いと皆が知っている。
戦果を叩き出すには、物事を知らなければならない。知識とは、文字通りの力なのだ。

元々私自身、作戦を考えたりといったことは得意ではない。詳しい知識があるわけでもなく、他人のことどころか、自分の普段取るスタイルについてすら怪しいものだ。
それでも、どうにか概要を把握することは出来る。重要なのはあくまで、各々が自分に出来ることをすることで……私がすることはいつもと変わらず、敵を墜として点を取ることだ。

多くのライダーが集っている。性別や年齢だけではなく、態度も、動機すらも一致しない集団。
ひとつだけ確かなことは、彼らは自らの意思でこの場に現れたということで……私もまた、その一員であるということだった。

作戦ブロックの確定後。元々役割の決まっている私は、作戦開始までの時間を、機体の調整に当てて過ごすことにした。

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「やっほ。調子はどう？」
「ん……ルーチェか」

マーケットのデータを漁る手を止めて視線を向ければ、ひらひらと手を振りながら歩いてくるルーチェの姿。彼女の視線は、私の持つ端末の画面に向いている。
例え世界の崩壊が示唆されても、彼女の態度はいつもと変わらない。改めてよく見れば、こちらへの信頼が見て取れるような気もする。
足を止めて気付くことも多いのだと感じる。ただ前へ前へと、そればかりが人の生ではないらしい。

「珍しいね？セイランがそんなに色々考えてるの。普段はもっと、簡単なリストしか見てないじゃない？」
「今回は少し、周囲にあわせて調整する必要があってな。とはいえ、私に出来ることは決まっているようなものだが……」
「……わざわざそういう調整するっていうと……文字通りの団体戦かな。あの、少し前に誰かが流してたヤツ？行くんだ？」

誘ってくれれば良かったのに、と唇を尖らせるルーチェ。すまない、と言って少し笑うと、驚いたように目を大きく見開いた。

「……セイラン、何か変だよ？変なものでも飲んだ？」
「失礼だな……心境の変化があったのは確かだが。そういうのは、分かるものなのか？」
「分かるよ、セイランのことだもん」

すぱっ、と言い切って笑うルーチェに一瞬目を奪われ、言葉が詰まった。少しの間を置いて、どうにか口を開く。

「……少しは、自分のことも大事にしようと思ってな」
「なんだ。良かった、死のうと思ってるとかじゃなくて。私には、ずっと捨て鉢になっているように見えてたもん」
「捨て鉢に……そんなことはない筈、だったが」

周囲からはそう見えてはいても、自分なりに芯を持っていたつもりで。でも今は、それが揺らいでしまっている。
いかに自分が不安定で、他人の言葉に支えられる存在なのかということを認識させられる。
こうしてルーチェの何でもないような言葉で、ちりちりと胸を焼くような感覚が収まって。

「……いや、済まない。私がどうであれ、見ているお前には心配をかけたか」
「ようやく気が付いた？……でも、本当に安心した。それに、少しはこっちにも目を向けてくれているみたいだし」
「…………」

黙り込んだ私を見て、くすくすと笑うルーチェ。
全て見通されているような感覚がして、気恥ずかしさを誤魔化すように視線を逸らした。

「ね。一緒に行こうね、果ての果てまで」
「……、ああ。よろしく、頼む」

伸ばされた手を、そっと握る。約束が、本当の意味で結ばれたような気がした。

残像領域のどこかの町にある、行き場のない者の寄り合い所。運営は気まぐれ。
利用・改築自由の集合住宅。2LDKの5階建て。
管理者に御用の方は、3階の角部屋まで。

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ユニオン活動：現在は制御*5
ユニオン購入：経験値+1、またはAP+10%