ENo.0176　クロムノート・ウェルサキオン

「……またできてやがる」

クロムノート・ヴェルサキオンは格納庫内でぽつりと呻いた。
目前には生き物の――それも節足動物のように無数の――足が生えた鉄の輪と呼称するべきもの。
それ自体が一つの生き物なのか、わさわさとどことなく生理的嫌悪感を呼び起こしそうな動きを不規則に繰り返していた。

「こりゃあひでえ。3週連続で過去最悪を更新しちまったな」

クロムノートが苦笑しながら呟くのは、悪趣味度の話だ。
ここ最近、何がどう影響したのかこんなものばかりできてしまう。
できた、というのは少し違うかもしれないが。
なにせ近頃のクロムノートはパーツを作成している時の記憶がない。
気付けば半日ほどの時間が飛んでいて、目の前には完成したパーツが出来上がっている、というのが3週ほど続いていた。
それも、どれもが正気を疑うような機能と見た目とコンセプトの品ばかりだ。
そんな品でも性能は抜群なのか売れ行きは良いが、今回のコレはとびっきりの悪趣味さだ。タガが外れたと言ってもいい。
まっとうな人間なら近づこうとすら思わないだろう。

「名前も決まっているってのは助かるんだけどな」

しかしクロムノートはそんな事を気にせず、生物的なパーツの近くに転がるメモ用紙を拾い上げる。
過去2週と同じく、そこには商品名がクロムノートの筆跡でしっかりと記入されていた。
曰く『蠢き這うものスモール・クロウラー』
なるほど、確かにこれは芋虫に似ているなと蠢く足を眺めながら他人事のように感じていた。
実際、作った記憶がないのだから他人事なのだが。

「しかし……こんなもんどうやってできちまったんだ」

首を傾げる。
巨大なねこじゃらし等も作れるのだから、作れない事はないだろうが、少なくともクロムノートにその技術と知識はない。
別の誰かが作ったと考えるのが筋だが、此処に侵入された気配はない。
あるいはあの銀髪の女や、うるさい上司ならできるかもしれないが。こんな悪趣味なものを作って立ち去るだけ、というのも考え辛いように思えた。何かコメントの一つくらいは残していきそうなものだが。

「とはいえ、俺じゃねえ。あいつ等でもねえ。となれば――」

格納庫の奥に収められている愛機レイジング・ヴァイパーへ視線を向ける。
今や頭部も取り外されて手足の生えた卵のようになったそれが、どこか、にやりと笑ったように思えた。

戦争！　戦争！　戦争だ！
喜べよ下種畜生ども。地獄のラッパが響いてきたぞ。
俺達が呼ばれている。
多くの血を流すため、多くの命を踏み潰すため、多くの死を広げるために。地獄の戦鬼が。

よう戦友！　アンタが求めるのは血か？　金か？　闘争か？　栄誉か？　はたまた正義なんて求めてるのか？
まあ、いいさ。どれだって。御大層な理由だろうがクソみたいな理由だろうが、やる事も同じなら逝く場所も同じなんだからよ。

どうあれ、ここにいるって事は俺と同じく戦争をより盛り上げたいってイカレ共だ。
死体と涙と恨みと鉄屑を空高く積み上げたいって、死んだら地獄行き間違いなしの畜生共だ。

同じ死体を漁る野良犬同士、せいぜい仲良く分け合っていこうぜ、なあ？

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格闘反応な命が葉っぱ勢のあなたに。
ユニオン活動は格闘×3　反応×2 → 格闘×2　反応×3の順で更新毎に変更していきます。

10人の状態で死亡者が出た場合、また2更新以上行動しない場合は参加許可を外す可能性があります。ご了承ください。

ユニオン購入は何かしら意見あるまでは機動力＋3%を予定しています。