ENo.0093　メーネ＝"クルーク"＝フライス

めでたしめでたし、で終わると思っていた戦争は終わらなかった。
それどころか、文字通り世界の存続がかかるほどの戦いになっている。

それを受けて、ハンガーに更に新しい機体が運ばれてきた。
鬼面の鎧武者のような外見の機体。今までのローコスト機とは違う、
畝木重工の持てる技術とコストの粋を集めた最新鋭試作機だ。
名前はヤスツナ。格闘戦に特化した機体である。

更にもう1機。四脚の射撃特化の機体。
こちらは直線を多く使った質実剛健そうな作りではあるが、
私が今まで乗ってきたジッテやコダチ改といった機体とは違う、ハイエンドな高級感を漂わせている。
センサーの出力も各パーツの馬力も段違いだ。こちらの名前はグラムだったか。
「もうデータとか取ってる場合じゃねえ！　とにかく出し惜しみなんぞしてられんぞ！」
ということで私に供与された機体だ。戦場に合わせてどちらでも好きなものを使えというはからいらしい。
急ピッチで整備が進められるこの2機だが、

メーネ「間に合わないわよね」
整備班「間に合いませんね」

新機軸の技術を詰め込み、ハードウェア的にも、ソフトウェア的にも、
今までの機体と比べて格段に複雑化した。
ひとつの項目チェックに12倍もの手間がかかるらしい。
しかも、新技術による試作機なので、あっちをいじればこっちの機能が落ち、
こっちをいじればあっちの機能が落ち、といった具合に大変に難敵なようだ。
この2機を完動状態まで持っていくのに、軽く1ヶ月はかかるというのが整備班の見通しだった。

整備班「…すみません。弊社の鳴り物入りだというので期待したのですが…」
メーネ「…まあ、実戦の最中にいきなりフリーズされたりしても困るし。
この戦いはコダチ改でなんとかしのぐわ」

良いモノよりも慣れたモノの方がいい場面もある。
今回がそういう場面だ。

整備班「ところでこの2機ですが、メーネさんのデータを元に開発されたそうですよ」
メーネ「そうなの？　私のデータなんて参考にならないでしょ」
整備班「…撃墜数ランク1桁の人が何言ってんですか」
メーネ「…え？　ランク？　なにそれ？」
整備班「…もしかして気付いてませんでした！？」

整備員の一人が私にタブレットの画面を見せる。

メーネ「―――！？！？！？！？！？」
整備班「気付いてなかったんですね…」
メーネ「いやだって…私には無縁の世界だと思って…全然チェックしてなかったわよこんなもん！！」

そのうち暇になったらパーティーを開いてもらえることになった。
その際、整備班が「じゃあこの戦いが終わったらお祝いしましょう」とか言いかけたので、
向こう脛を蹴り飛ばして黙らせた。そういう不吉なことを言うんじゃありません。
「そのうち」で結構です。

兵器メーカー、畝木（うなぎ）重工が管理する広大な射爆場です。
この度、社員以外の一般の方々にも解放させていただく運びとなりました。
弾薬やターゲットドローン等は当社負担で提供致します。
射撃能力を伸ばしたい方、無料の弾丸をとにかくぶっ放したいだけの方、
資格は問いません。どうぞご参加下さいませ。

※スペースと当社予算の関係から、募集は先着で限定10名様となります。
※ユニオン活動は射撃×5の射撃特化ユニオンとなります。
※破壊したターゲットドローンの残骸は買い取りしていただけます。
　ドローンとは言え、当社自慢の逸品です。
　残骸から何かしら有用な部品が入手できるかもしれません。
　（ユニオン購入は素材+1となります）


※射爆場内での射撃・機動のデータは畝木重工が観測・記録し、
　当社製品の技術開発に転用させていただく場合がございます。