第40週目 天ヶ瀬 澪の一週間
霊障見舞金として3000cの資金が送られました
残像のミオ 「…え、…どう、して…!?」 |
残像のミオ 「胸が痛い…苦しい… いや…いやあっ!わたしは、まだ見つけてないのにっ…!!」 |
残像のミオ 「やだ…やだよぉ! まだ…まだ、わたしは死にたく……」 |
残像のミオ 「…あっ…」 |
残像のミオ 「…そっか。…わたし…まだ… 死んでなかったんだ…」 |
それじゃ、るいだって見つけられないよね…」
(…にひと…まもらせてあげられなくて…ごめん…ね…)
◆日記
※先にEno4からのメッセージの閲覧を推奨します
むせ返るほどの潮の香り。寄せては返す白波の音。風に乗って千切れ雲が、一つの場所へ向かっていく。
海だ。大海だ。残像領域ではただの噂でしか無かった海が、目の前に広がっている。
波打ち際には、少女…否、少女たちが、目の前の海を見つめている。
その少女たちを見守る様に、頭部のカメラを向ける。今まで戦い続けた、ゼービシェフだ。
ガレージを出た後の、最終決戦。ハイドラ『ゼービシェフ』と発芽したばかりのアルラウネ『ミオ』は、無我夢中で戦場を駆け巡った。
とはいえ、素体は最早ガラクタと化した旧式の機体。蔦を絡ませることでパーツを固定し、液体で覆うことで姿をかろうじて維持した代物が、そう長く保つことも無かった。
限界を何度も越えた今や、胴体すら跡形もない。頭部と操縦棺を残したまま、砂浜にすっかり埋もれてしまっていた。
長い間、さざなみが行き交う音のみが、その場を支配していた。先に静寂を破ったのは、羽を生やした少女の方だ。
「やっと、全部叶ったねっ!」
そう言って、にっこりと笑みを見せる。覗かせる八重歯が、少女の持つ快活さを示すかのようだ。
“ん…よかっ、た”
相手の少女は、か細い声で返答した。
少女と言っても、それは隣で眠るように座っている機械…ヒューマノイドではない。声の主は弱々しく宙に浮かぶ、くじらの姿をしていた。
宙を泳いでいたときに比べるとかなり小さくなってしまった。その大きさは小魚程度でしかなく、空色の水の肉体はぽたりぽたりと地に落ちていきながら、今もなお小さくなっていく。
泪(るい)は苦々しい表情で、きょうだいを見た。
魂そのものが限界を迎えている。るいは天使の身であるがゆえに、それを直感的に理解した。
死後の魂が拾い上げられ、生まれた天使。その役目は、『魂を解放し、次の輪廻を送らせること』…人の世で言う、『成仏』に相当するものだ。
だが今のきょうだい…澪(ミオ)の魂は、解放するまでもなく消えかけている。
このままでは輪廻を送らせる為に必要な心ごと消えてしまう、かもしれない。
あまりにも心苦しかった…けれど、歩みを止めることも出来ない。
「あのさ…るい、今までのことぜーんぶ、見せてもらったけどさ」
”……”
アルラウネ・ユニットは、残像を苗床として発芽する。しかし、ミオの残像と魂から変換したエネルギーを含めても、発芽は足り得なかった。
そこで助けを求めたのが、きょうだいであり、約束を叶えたいと願っていた、るいだった。
るいはその身体を喜んで発芽のために明け渡した。その間、ずっと別れていた片割れの記憶を見たのだ。
短く、長い、半年を。
「…みおは、これで良かったの?」
“……、…ん。”
「…そっかぁ」
くじらが頷いた、気がした。
おとなしくて、一歩引いてしまう。それがミオの良いところで、悪いところである。自分なら、仮に相手が嫌がっていても駄々をこねたのだろう。生きていた頃から、そんなことはお互い理解している。
ただ、ミオはずっとずっと、大人になってしまった。るいは、そう感じていた。それはきっと、ユニオンにいた人々やハイドラ乗り、そしてあの、にひとお兄ちゃんが居たからなんだろう。ふと、自分の身体に未だ絡みついている蔦と花々を見つめる。
”……るい…”
「えっ?」
”また…みんな…で…、…うみ…見れ…ると…いい、ね…”
ミオがそう言い切ると、くじらは身体全てを地にこぼした。
――その瞬間。
弱りかけていたはずの蔦は急激に伸び、るいの周囲を覆い始めた。
そのあまりにも速いスピードに、みおはきょうだいの消失に声をあげることも出来なかった。目の前はすっかり閉ざされ、意識もまた、暗くなっていった。
=======================
Alraune unit running ...
start karma format end
start bio glows
=======================
さざなみの音とは、また別の音がする。
懐かしい音……えっ?待って。どーして、ここで?
るいは違和感に気付くと慌てて飛び起きた・・・が、勢い良く上体を起こすと、頭が何か天井のようなものにぶつかった。
「うえっ!?…うぅ、いったぁっ……」
るいは頭を抱えながら、辺りを見回す。木目で出来た壁。木の独特の匂い。丸く空いた出口。田舎育ちのるいにとって、大きな樹のうろだと判断するのは容易かった。
うろからなんとか身体を這い出すと、違和感の正体はすぐに判明した。…自分の立っていた場所に、大きな樹が生えていたのだ。
立派な枝振りの樹だ。違和感はこの木が出す、葉ずれの音だったのだ。本物のシロナガスクジラほどの大きさがありそうな大樹を、るいはぼんやりと眺めた。
海の潮風にも負けじと大樹には、青とも橙とも違う、白い花が咲いている。
巨木となったアルラウネユニットから、ミオの気配は、感じられない。次第にるいの表情は暗くなっていく。
「…みおはさ。ほんっとーにずるいよねぇ」
独り言だ。
「やさしい人たち出会って、たっくさん笑って…喜んで…」
「いろんな人と楽しくお話して、パーティもいーっぱいして…」
「それに、先にステキなおムコさんまで見つけちゃってさ…ずるいよ。」
「それで…それで、るいの為にあんなに…がんばって……!!」
「なんで…なんでなんだよぉっ!!」
「みおの、みおの……バカ…ぁっ!!!」
もう届かない、独り言だ。
嗚咽をあげ、肩を震わせる。波打ち際の天使は、大粒のなみだを落とした。
ひとしきり泣いてしまうと、ぐしぐしと腕で涙を拭い去る。
ずっと泣いていてもしょうがない。…そう思った、その時だった。
ふと、目に留まるものがあった。
――青い、花だ。
大樹のふもとに、あのアルラウネが咲かせていた青い花が、ひとつだけ落ちている。
仄かに暖かく、柔らかな光を放つそれは、ただの花では無さそうだった。
るいは花をそっと拾い上げる。…感じられなかったはずの、ミオの気配を感じた。しかも、それはしっかりと形を維持している。
るいは花を大事そうに両手で抱えると、波に打たれていた操縦棺に目を向けた。じっと見つめる瞳に、迷いは無かった。
棺の中は、埃っぽい、鉄っぽい臭いが充満していた。その中に、ミオの現し身であるヒューマノイドを寝かせた。
幸いにも何の犠牲にもならなかったようだが、記憶の中よりぼろぼろになってるように見えた。
ふと、先程の高圧的なミオの顔を思い出す。2人目のきょうだいは自分よりおてんばなのかな、などと思いながらるいはその機械の身体の周囲に『お供え物』を入れ始めた。
お気に入りのお洋服にヘアピン。ぬいぐるみ。それから、にひとお兄ちゃんのミオ宛のお手紙。手紙の内容は、あえて見ないでおいた。
「うーん…こうで、良いのかな?…あ、そういえばわたしたち、お葬式行ったこと無かったねぇ」
一通り敷き詰めてしまうと、それらをぽんぽん、と軽く押し込む。
「…お船みたいだよ、みお。」
柔らかなパステルカラーに囲まれた棺は、さながら沢山の人間を乗せて遠くの国へゆく旅客船のようだった。本やラジオでしか聞いたことは無いけど、きっとこんな感じなんだろう。
るいは改めて、棺の中に眠るきょうだいの表情をまじまじと見た。自分と瓜二つの表情をしたあどけない、どこか不安そうな表情。その表情に応えるように、るいは微笑んでみせた。
そして、相手を安心させようとする声色で胸の上に、何かを乗せはじめた。
「だぁいじょうぶ。」
それは村の記憶。身につけていた丸い、赤縁のメガネ。
「絶対また、会えるよ。」
それは霧の国の記憶。大好きなニーユ・ニヒト・アルプトラの象徴だったタオル。
「るいにも…にひとお兄ちゃんにも。」
そして、それは、アルラウネの咲かせた青い花。ミオの、魂。
全てを乗せてしまうと、落とさないようにしっかり両腕で抱えさせた。
「ね。また、海を見よう。みお。…今度も、みんなでさ!」
棺の船を押して、波の上にぷかりと浮かべる。出航の時間はやってきた。ひとりの少女の、新たな生への航海だ。
「…行こう!わたしたちの海へ!…わたしたちの、未来へ!」
海には何も障害はない。船は大海原へとひとりでに、ゆっくりと漕ぎだした。
船の横には、トビウオのような銀の羽根を広げた天使が、くっ付くように海面ギリギリを飛んでいく。
沖へ、沖へ。先の見えない場所へ向かっていく。そして…2人の姿は、やがて見えなくなった。
~♪
はやちたちまち 波を吹き
赤裳(あかも)のすそぞ ぬれひじし
病みし我は すべていえて
浜の真砂 まなごいまは――
遠くのどこかで、歌は、終わった。
天ヶ瀬 澪は、もう…どこにもいない。
…だが、此処には確かに少女がいたのだ。なぜなら、此処には『澪標』があるのだから。
https://goo.gl/exim54
むせ返るほどの潮の香り。寄せては返す白波の音。風に乗って千切れ雲が、一つの場所へ向かっていく。
海だ。大海だ。残像領域ではただの噂でしか無かった海が、目の前に広がっている。
波打ち際には、少女…否、少女たちが、目の前の海を見つめている。
その少女たちを見守る様に、頭部のカメラを向ける。今まで戦い続けた、ゼービシェフだ。
ガレージを出た後の、最終決戦。ハイドラ『ゼービシェフ』と発芽したばかりのアルラウネ『ミオ』は、無我夢中で戦場を駆け巡った。
とはいえ、素体は最早ガラクタと化した旧式の機体。蔦を絡ませることでパーツを固定し、液体で覆うことで姿をかろうじて維持した代物が、そう長く保つことも無かった。
限界を何度も越えた今や、胴体すら跡形もない。頭部と操縦棺を残したまま、砂浜にすっかり埋もれてしまっていた。
長い間、さざなみが行き交う音のみが、その場を支配していた。先に静寂を破ったのは、羽を生やした少女の方だ。
「やっと、全部叶ったねっ!」
そう言って、にっこりと笑みを見せる。覗かせる八重歯が、少女の持つ快活さを示すかのようだ。
“ん…よかっ、た”
相手の少女は、か細い声で返答した。
少女と言っても、それは隣で眠るように座っている機械…ヒューマノイドではない。声の主は弱々しく宙に浮かぶ、くじらの姿をしていた。
宙を泳いでいたときに比べるとかなり小さくなってしまった。その大きさは小魚程度でしかなく、空色の水の肉体はぽたりぽたりと地に落ちていきながら、今もなお小さくなっていく。
泪(るい)は苦々しい表情で、きょうだいを見た。
魂そのものが限界を迎えている。るいは天使の身であるがゆえに、それを直感的に理解した。
死後の魂が拾い上げられ、生まれた天使。その役目は、『魂を解放し、次の輪廻を送らせること』…人の世で言う、『成仏』に相当するものだ。
だが今のきょうだい…澪(ミオ)の魂は、解放するまでもなく消えかけている。
このままでは輪廻を送らせる為に必要な心ごと消えてしまう、かもしれない。
あまりにも心苦しかった…けれど、歩みを止めることも出来ない。
「あのさ…るい、今までのことぜーんぶ、見せてもらったけどさ」
”……”
アルラウネ・ユニットは、残像を苗床として発芽する。しかし、ミオの残像と魂から変換したエネルギーを含めても、発芽は足り得なかった。
そこで助けを求めたのが、きょうだいであり、約束を叶えたいと願っていた、るいだった。
るいはその身体を喜んで発芽のために明け渡した。その間、ずっと別れていた片割れの記憶を見たのだ。
短く、長い、半年を。
「…みおは、これで良かったの?」
“……、…ん。”
「…そっかぁ」
くじらが頷いた、気がした。
おとなしくて、一歩引いてしまう。それがミオの良いところで、悪いところである。自分なら、仮に相手が嫌がっていても駄々をこねたのだろう。生きていた頃から、そんなことはお互い理解している。
ただ、ミオはずっとずっと、大人になってしまった。るいは、そう感じていた。それはきっと、ユニオンにいた人々やハイドラ乗り、そしてあの、にひとお兄ちゃんが居たからなんだろう。ふと、自分の身体に未だ絡みついている蔦と花々を見つめる。
”……るい…”
「えっ?」
”また…みんな…で…、…うみ…見れ…ると…いい、ね…”
ミオがそう言い切ると、くじらは身体全てを地にこぼした。
――その瞬間。
弱りかけていたはずの蔦は急激に伸び、るいの周囲を覆い始めた。
そのあまりにも速いスピードに、みおはきょうだいの消失に声をあげることも出来なかった。目の前はすっかり閉ざされ、意識もまた、暗くなっていった。
=======================
Alraune unit running ...
start karma format end
start bio glows
=======================
さざなみの音とは、また別の音がする。
懐かしい音……えっ?待って。どーして、ここで?
るいは違和感に気付くと慌てて飛び起きた・・・が、勢い良く上体を起こすと、頭が何か天井のようなものにぶつかった。
「うえっ!?…うぅ、いったぁっ……」
るいは頭を抱えながら、辺りを見回す。木目で出来た壁。木の独特の匂い。丸く空いた出口。田舎育ちのるいにとって、大きな樹のうろだと判断するのは容易かった。
うろからなんとか身体を這い出すと、違和感の正体はすぐに判明した。…自分の立っていた場所に、大きな樹が生えていたのだ。
立派な枝振りの樹だ。違和感はこの木が出す、葉ずれの音だったのだ。本物のシロナガスクジラほどの大きさがありそうな大樹を、るいはぼんやりと眺めた。
海の潮風にも負けじと大樹には、青とも橙とも違う、白い花が咲いている。
巨木となったアルラウネユニットから、ミオの気配は、感じられない。次第にるいの表情は暗くなっていく。
「…みおはさ。ほんっとーにずるいよねぇ」
独り言だ。
「やさしい人たち出会って、たっくさん笑って…喜んで…」
「いろんな人と楽しくお話して、パーティもいーっぱいして…」
「それに、先にステキなおムコさんまで見つけちゃってさ…ずるいよ。」
「それで…それで、るいの為にあんなに…がんばって……!!」
「なんで…なんでなんだよぉっ!!」
「みおの、みおの……バカ…ぁっ!!!」
もう届かない、独り言だ。
嗚咽をあげ、肩を震わせる。波打ち際の天使は、大粒のなみだを落とした。
ひとしきり泣いてしまうと、ぐしぐしと腕で涙を拭い去る。
ずっと泣いていてもしょうがない。…そう思った、その時だった。
ふと、目に留まるものがあった。
――青い、花だ。
大樹のふもとに、あのアルラウネが咲かせていた青い花が、ひとつだけ落ちている。
仄かに暖かく、柔らかな光を放つそれは、ただの花では無さそうだった。
るいは花をそっと拾い上げる。…感じられなかったはずの、ミオの気配を感じた。しかも、それはしっかりと形を維持している。
るいは花を大事そうに両手で抱えると、波に打たれていた操縦棺に目を向けた。じっと見つめる瞳に、迷いは無かった。
棺の中は、埃っぽい、鉄っぽい臭いが充満していた。その中に、ミオの現し身であるヒューマノイドを寝かせた。
幸いにも何の犠牲にもならなかったようだが、記憶の中よりぼろぼろになってるように見えた。
ふと、先程の高圧的なミオの顔を思い出す。2人目のきょうだいは自分よりおてんばなのかな、などと思いながらるいはその機械の身体の周囲に『お供え物』を入れ始めた。
お気に入りのお洋服にヘアピン。ぬいぐるみ。それから、にひとお兄ちゃんのミオ宛のお手紙。手紙の内容は、あえて見ないでおいた。
「うーん…こうで、良いのかな?…あ、そういえばわたしたち、お葬式行ったこと無かったねぇ」
一通り敷き詰めてしまうと、それらをぽんぽん、と軽く押し込む。
「…お船みたいだよ、みお。」
柔らかなパステルカラーに囲まれた棺は、さながら沢山の人間を乗せて遠くの国へゆく旅客船のようだった。本やラジオでしか聞いたことは無いけど、きっとこんな感じなんだろう。
るいは改めて、棺の中に眠るきょうだいの表情をまじまじと見た。自分と瓜二つの表情をしたあどけない、どこか不安そうな表情。その表情に応えるように、るいは微笑んでみせた。
そして、相手を安心させようとする声色で胸の上に、何かを乗せはじめた。
「だぁいじょうぶ。」
それは村の記憶。身につけていた丸い、赤縁のメガネ。
「絶対また、会えるよ。」
それは霧の国の記憶。大好きなニーユ・ニヒト・アルプトラの象徴だったタオル。
「るいにも…にひとお兄ちゃんにも。」
そして、それは、アルラウネの咲かせた青い花。ミオの、魂。
全てを乗せてしまうと、落とさないようにしっかり両腕で抱えさせた。
「ね。また、海を見よう。みお。…今度も、みんなでさ!」
棺の船を押して、波の上にぷかりと浮かべる。出航の時間はやってきた。ひとりの少女の、新たな生への航海だ。
「…行こう!わたしたちの海へ!…わたしたちの、未来へ!」
海には何も障害はない。船は大海原へとひとりでに、ゆっくりと漕ぎだした。
船の横には、トビウオのような銀の羽根を広げた天使が、くっ付くように海面ギリギリを飛んでいく。
沖へ、沖へ。先の見えない場所へ向かっていく。そして…2人の姿は、やがて見えなくなった。
~♪
はやちたちまち 波を吹き
赤裳(あかも)のすそぞ ぬれひじし
病みし我は すべていえて
浜の真砂 まなごいまは――
遠くのどこかで、歌は、終わった。
天ヶ瀬 澪は、もう…どこにもいない。
…だが、此処には確かに少女がいたのだ。なぜなら、此処には『澪標』があるのだから。
https://goo.gl/exim54
NEWS
本日のニュースですきょうで『禁忌戦争』から5年が経ちました
あの時、最後に姿を消したメルサリア氏とハイドラ大隊
彼らが救ったと言われている世界は、きょうも続いており、我々は彼らを待つほかありません
クリスマスが近づくころ、ハイドラの英雄たちの物語もまた、語り継がれていきます
霧は消え、巨大樹木の世界となったいま、彼らは少し迷っているのかもしれません
霧と共に消えた彼らは、今どこにいるのでしょうか。それは、誰にも――
辺境のレジスタンス『ルオシュ』 「ルオシュだ。返事が無くても構わない。俺は貴公にメッセージを送り続ける」 |
辺境のレジスタンス『ルオシュ』 「俺は、相変わらず戦い続けている。戦いの形はいくらか変わったが……まぁ、たいした問題ではない」 |
辺境のレジスタンス『ルオシュ』 「ああ、貴公たちが育ててくれた『アルラウネの木』は、今も元気に育っているよ。新世界たちも、無害な白い花に変わっている」 |
辺境のレジスタンス『ルオシュ』 「俺はな……料理を始めたんだ。趣味じゃないぞ。料理人として、店を持ったんだ」 |
辺境のレジスタンス『ルオシュ』 「貴公にもぜひ来てほしい。とっておきのパスタとピザを作ってやろう。店の場所は――」 |
ヒルコ教団の信者 「ヒルコ様ーーーー!!早く支度をしてくだされーーーー!!」 |
ヒルコ教団の信者 「あんなに、楽しみだからって夜更かしはいけないと、あんなに……!」 |
残像に手向ける女神『ヒルコ』 「くわっ! いやー、よく寝ました」 |
◆ミッション
ミッション設定……ミッションD
ルオシュからの信用……♦♦♦♦♦♦♦♦♦
メッセージ
ENo.4からのメッセージ>>
――低い、低い、鳴き声が聞こえる。
か細い歌声が聞こえる。
誰もいないはずの場所から、頭痛を伴って聞こえてくる歌声。
頭痛の原因はいくらでも思いついた。
次回の戦場。おそらく最後になるだろう出撃。これ以上ハイドラライダーを続けるつもりは、もうない。今の僚機である彼にも、そう申し入れをしておかなければならないけれど、その暇もない。慌ただしい。ただ慌ただしく、時間だけが過ぎていく。
子供のように語る言葉。かつての禁忌を夢見る少女のような言葉。何度も繰り返し生きてきた夢見る少女の言葉は、無限に重い。
新しい操縦棺を作る。作った。発送は済ませた。最後にはミリアピードの脚を新調する。どこまでもいける脚を。悪夢を踏み潰し生きた証で塗り替える重い脚を。
企業連盟のかつてのボスは、まだ見つからないらしい。レジスタンスの男は戦い続けると言った。
霧が彼とともにありますように。ただ彼が迷わなくありますように。――そうすれば自分も救われる気がしたのだ。
――どこにも無意味な戦いはなかったのだと思わせて欲しい。
清濁全て――失ったことを、憎悪を、謙遜を、嫉妬を、恨みを、心配を、怒りを、思い出を、居場所を――そう全てを。何もかもを。何もかもを飲み込んで出撃できたとき、ハイドラライダーとしてのニーユ=ニヒト・アルプトラは死ぬだろう。
ライダーである必要が無いのだ。長い戦いの中で得られた知見といえばそれこそ、“自分はハイドラライダーには致命的に向いていない”以外のことがなかった。
戦いの中に身をおくことは、自分にはできない。傍から眺めていて、誰かの世話を焼いている方がずっといい。そしてそれらの両立は、実質的に不可能だ。
失われたものは大きい。次も、誰が、死ぬのか。
自分だけでいい。そうは行かないだろう。どのような結果が残ったとしても、ハイドラライダーとしての【ニーユ=ニヒト・アルプトラ】はおしまいだ。死場に行くのだ。ライダーとしての自分を完膚なきまでに殺すべくして、向かうのだ。
すべてを無に返したくはない。せめて足掻いた足跡を残したい。だからこそ戦い続けるし、戦い続けてきた。
たとえ戦いの場が変わっても、ハイドラライダーとしての【ニーユ=ニヒト・アルプトラ】が、何の無駄でもなかったことを証明したい。ただそれだけだ。前へ。前へ。進め。進め。進め進め進め進め。
――にひと。
無限に続きそうな頭痛の中で、歌声の中で、はっきりと声がした。
いなくなったはずの人。もう会えないはずの人。――電磁波0%の予報で、聞こえるはずのない声。霊障は当に果てている。
――塩分の匂いがした。
そうとしか許容できない匂いがした。
何が。何が起こっている?
一体どうして?
飛び起きた。サンダルをつっかけて、外に飛び出した俺を待っていたのは、
水浸しになったような痕のあるガレージ。
場違いに落ちている青い花。
そして、遠い遠い空を泳ぐ――巨大な鯨。
在りし日の夢をそのまま形にしたような、“海の色の鯨”。
唖然としている暇はなかった。
これこそが“海”なのではないか?姉が指していた“しおのにおい”とは、このことなのではないか?
つんのめって脱げたサンダルを蹴飛ばしてでも、走る。走れ。まだそこにいるはずなのだから。
花が咲いていた。頭から、背中から、植物の茎によって太く隆起した右腕から、青い花が咲いては散っていた。一輪だけオレンジの花がぽつんと咲いては、そして散って消えていく。
振り向いた姿は、確かに喪われた“天ヶ瀬澪”そのものだった。
――その描く表情だけが、致命的に違う。
ごく短い言葉で否定する。
それだけで、目の前の人間――否、残像――でもない、天使のように羽を生やした少女が誰であるのか、理解するには充分すぎた。
天ヶ瀬泪。
ミオがずっと探し続けていた人。海でまた会おうねという言葉を残していった、彼女のきょうだい。
ここは海なんだろうか。目眩がした。頭痛もひどくなりゆくばかりだった。
同じ声で呼ぶ。その名前を呼ばないで欲しい。君がミオの半身であったとしても、お前にその名前を呼ぶ資格はない。
そう、睨みつけようとしたときだった。無数の花が咲き散っていく。ガレージの中を埋め尽くさんばかりの勢いで、青い花びらが散っていった。
――在りし日の残像。残像に手向ける女神。いつか発芽するアルラウネ。
二人分の声がする。なんて、なんて残酷なことだろうかと思う。仮に彼女がここで生き続けていたら、そもそも出会うことは不可能だったのか。
――天ヶ瀬泪は死んでいる。天ヶ瀬澪は、何らかの理由により昏睡状態にあり、その魂だけがここにやってきた。そして、彼女たちが出会ったと言うことは。
立つ世界が同じになった。見える世界が同じになった。自分とは違う世界へ行ってしまった。改めてその事実が、矢のように突き刺さる。守れなかった後悔の傷跡を抉るように。
細波。しおのにおい。
青い空。白い雲。白い砂浜。――真っ青な海!
ガレージの中に山のように積もったはずの青い花びらが、浜辺に打ち寄せる波に変わっていく。オレンジの花びらが蟹に変わって、砂浜を早歩きで歩いていった。
無機質な金属類の並ぶガレージも、無限に続くような広い荒野も、どこにもない。
目の前に海が広がっている。しおのにおい。これが、これが。
少女の右手は、もはや人の手を握れるような状態ではなかった。
男の右手は、肘の先で切断されて、別のものが付けられていた。
――男の右手を、少女の左手が掴む。
手を引かれていく。足元が冷たい。水に濡れている感覚ではなかった。もっと深いところへ誘われているような感覚。
もしかしたら、本当にその手を取ってしまう選択も、あったのかもしれない。
けれどそれはもうできない。死んだものを追いかけるということはそういうことで、――であれば残されたひとが、どうなる。
ひどい頭痛がした。霊障に頭を揺さぶられているような感覚にひどく似ていた。ここだけ異常に電磁波が高いような、そんな。
ものが揺れる代わりに、足元の波が、強く足を叩く。そのまま引波が、より向こうへ引きずり込もうとしてくるように。
海の色が変わった。どんよりした霧のような空の色で、激しくうねる大波が暴れている。低い声で何かが鳴いていた。地に足の付いている感覚すら、あやふやになってくる。
ミリアピードすら軽々飲み込むような大波が眼前に迫る。――それでも、落ち着いていた。掛ける言葉は決まっていた。
電磁アックスを振り抜いたようなエネルギーの奔流が、大波を切り裂く。
ぐずぐずと濁りゆく海の色をちらりと見て、言った。
花びらが散っていく。足にかかった波の飛沫が、青い花びらに変わって消えていった。
俯いた少女の頭から、右腕から、開いたままの花がぼとぼとと落ちていく。
あのとき呼び止めなかったら?
あのときもう一歩前に踏み出せていれば?
キリがない。だからこそ、キリをつけなければならない。
小さく頷いた少女の頭に咲いていた、ひときわ大きな青い花がはらりと落ちた。
見る間に蕾が生えてきて、再び花が咲く。そのとき、アルラウネの少女の描く表情は、もう別人のものだ。
もはやガラクタとしか形容できない、ずんぐりむっくりとした身体が、そこにあった。
ひび割れた装甲をつなぐように無数に張り巡らされた植物の蔦と根と、表面張力でその場に留まっているような液体が、ゼービシェフを立たせている。ハイドラとしての形を保たせている。
困ったような顔をされた。ミオによく似ていた。
悲しい顔をしないでほしかった。そんなことを言っても、無理なのは分かっていた。お互いに。
ぬいぐるみ。ヘアピン。気に入っていた服。――それからいつかの手紙の返事。子供に持たせるのにちょうどいいものが何もない。数秒迷って、自分の首に巻いていたタオルを取った。ビニール袋に包んでから、渡すものをくるんだ。長めのビニタイで縛れば、簡単な袋の完成だ。
二人が、どれだけ二人でいられたのだろう。
何事もなく過ごせる世界を、次こそは彼女たちに望みたかった。いつかまた会えますように、輪廻転生の先でいつかまた。いつになるのかなんて、そんなことは知ったことではない。
何を言ったらいいのかわからない時間の中に、小さな足音が響いた。
アルラウネの少女がぎょっとした顔をした。
それもそうだろう。自分と全く同じ姿形の人型が、自律してこちらに歩いてくるのだから。“ヒューマノイドのミオ”の処分にも確かに困っていたことには口をつぐみつつ、ベルベットの配慮に感謝をした。よくできたAIだ。
手を取る。双子が双子として、この世界で顔を合わせるのは、これが最初で最後。
耳打ちをされようとしている。屈み込んだ、その次の瞬間だった。
――
――低い、低い、鳴き声がした。
知らない言葉の、知らない歌だ。次の瞬間には、続いていた頭痛も、そこにいたはずの『オカミ』たちも、忽然と消えている。
呆然と立ち尽くしていた。長い夢を見ていたような気がした。汗を拭おうとして手に取ろうとしたタオルがないことに気づくまで、もう数瞬。
『海に連れてきてくれて……一緒に、見てくれて、ありがとう。』
霧が晴れている。
霧が晴れていた。
迷いも後悔も怒りも憎しみも、すべてを飲み込んだ霧が。
ENo.61からのメッセージ>>
ENo.70からのメッセージ>>
――低い、低い、鳴き声が聞こえる。
か細い歌声が聞こえる。
誰もいないはずの場所から、頭痛を伴って聞こえてくる歌声。
ニーユ 「……くそ……」 |
次回の戦場。おそらく最後になるだろう出撃。これ以上ハイドラライダーを続けるつもりは、もうない。今の僚機である彼にも、そう申し入れをしておかなければならないけれど、その暇もない。慌ただしい。ただ慌ただしく、時間だけが過ぎていく。
子供のように語る言葉。かつての禁忌を夢見る少女のような言葉。何度も繰り返し生きてきた夢見る少女の言葉は、無限に重い。
新しい操縦棺を作る。作った。発送は済ませた。最後にはミリアピードの脚を新調する。どこまでもいける脚を。悪夢を踏み潰し生きた証で塗り替える重い脚を。
企業連盟のかつてのボスは、まだ見つからないらしい。レジスタンスの男は戦い続けると言った。
霧が彼とともにありますように。ただ彼が迷わなくありますように。――そうすれば自分も救われる気がしたのだ。
――どこにも無意味な戦いはなかったのだと思わせて欲しい。
清濁全て――失ったことを、憎悪を、謙遜を、嫉妬を、恨みを、心配を、怒りを、思い出を、居場所を――そう全てを。何もかもを。何もかもを飲み込んで出撃できたとき、ハイドラライダーとしてのニーユ=ニヒト・アルプトラは死ぬだろう。
ライダーである必要が無いのだ。長い戦いの中で得られた知見といえばそれこそ、“自分はハイドラライダーには致命的に向いていない”以外のことがなかった。
戦いの中に身をおくことは、自分にはできない。傍から眺めていて、誰かの世話を焼いている方がずっといい。そしてそれらの両立は、実質的に不可能だ。
失われたものは大きい。次も、誰が、死ぬのか。
自分だけでいい。そうは行かないだろう。どのような結果が残ったとしても、ハイドラライダーとしての【ニーユ=ニヒト・アルプトラ】はおしまいだ。死場に行くのだ。ライダーとしての自分を完膚なきまでに殺すべくして、向かうのだ。
すべてを無に返したくはない。せめて足掻いた足跡を残したい。だからこそ戦い続けるし、戦い続けてきた。
たとえ戦いの場が変わっても、ハイドラライダーとしての【ニーユ=ニヒト・アルプトラ】が、何の無駄でもなかったことを証明したい。ただそれだけだ。前へ。前へ。進め。進め。進め進め進め進め。
――にひと。
無限に続きそうな頭痛の中で、歌声の中で、はっきりと声がした。
いなくなったはずの人。もう会えないはずの人。――電磁波0%の予報で、聞こえるはずのない声。霊障は当に果てている。
ニーユ 「……ッ……」 |
――塩分の匂いがした。
そうとしか許容できない匂いがした。
ニーユ 「!?」 |
一体どうして?
飛び起きた。サンダルをつっかけて、外に飛び出した俺を待っていたのは、
ニーユ 「……魚……、……いや、違う……」 |
場違いに落ちている青い花。
そして、遠い遠い空を泳ぐ――巨大な鯨。
在りし日の夢をそのまま形にしたような、“海の色の鯨”。
ニーユ 「……!」 |
これこそが“海”なのではないか?姉が指していた“しおのにおい”とは、このことなのではないか?
つんのめって脱げたサンダルを蹴飛ばしてでも、走る。走れ。まだそこにいるはずなのだから。
ニーユ 「――ミオ!!」 |
振り向いた姿は、確かに喪われた“天ヶ瀬澪”そのものだった。
――その描く表情だけが、致命的に違う。
「うーうん」 |
それだけで、目の前の人間――否、残像――でもない、天使のように羽を生やした少女が誰であるのか、理解するには充分すぎた。
ニーユ 「……じゃあ、君は……」 |
「……るい。あまがせ、るいだよっ」 |
ミオがずっと探し続けていた人。海でまた会おうねという言葉を残していった、彼女のきょうだい。
ここは海なんだろうか。目眩がした。頭痛もひどくなりゆくばかりだった。
“るい” 「にひと」 |
ニーユ 「……!」 |
そう、睨みつけようとしたときだった。無数の花が咲き散っていく。ガレージの中を埋め尽くさんばかりの勢いで、青い花びらが散っていった。
“ ” 「にひと……ミオ、ミオね……」 |
――在りし日の残像。残像に手向ける女神。いつか発芽するアルラウネ。
“ミオ” 「どうしても…ひとつだけ、叶えたいことがあって……だから……」 |
“るい” 「そっ。だから、るいが来たんだよぉ。えっへへ……だって二人の約束は、もう叶っちゃったもん。ねっ、ミオ!」 |
――天ヶ瀬泪は死んでいる。天ヶ瀬澪は、何らかの理由により昏睡状態にあり、その魂だけがここにやってきた。そして、彼女たちが出会ったと言うことは。
立つ世界が同じになった。見える世界が同じになった。自分とは違う世界へ行ってしまった。改めてその事実が、矢のように突き刺さる。守れなかった後悔の傷跡を抉るように。
“ミオ” 「ね、にひと。……聞いて、くれる?」 |
ニーユ 「……うん、」 |
細波。しおのにおい。
青い空。白い雲。白い砂浜。――真っ青な海!
ニーユ 「――!?」 |
無機質な金属類の並ぶガレージも、無限に続くような広い荒野も、どこにもない。
目の前に海が広がっている。しおのにおい。これが、これが。
“ミオ” 「これが、ミオの…さいごの、お願い」 |
ニーユ 「……」 |
男の右手は、肘の先で切断されて、別のものが付けられていた。
――男の右手を、少女の左手が掴む。
“ミオ” 「るいにお願いしたの……ミオのお願い聞いてくれる?って……」 |
手を引かれていく。足元が冷たい。水に濡れている感覚ではなかった。もっと深いところへ誘われているような感覚。
“ミオ” 「にひと。前に、言ったよね?一緒に、海に行こう…って。ね、だから…行こう?…『わたしたち』の、海へ。」 |
ニーユ 「ミオ」 |
けれどそれはもうできない。死んだものを追いかけるということはそういうことで、――であれば残されたひとが、どうなる。
ニーユ 「俺は一緒には行けない。……ミオ、俺にはここにいなきゃいけない理由がある」 |
“ミオ” 「どう……して?」 |
ものが揺れる代わりに、足元の波が、強く足を叩く。そのまま引波が、より向こうへ引きずり込もうとしてくるように。
“ミオ” 「ミオと一緒に行ってくれるって……約束したのに……!」 |
ミリアピードすら軽々飲み込むような大波が眼前に迫る。――それでも、落ち着いていた。掛ける言葉は決まっていた。
“ミオ” 「にひとの嘘つき!!ミオは、ミオは……っ!!」 |
ニーユ 「――違う」 |
ぐずぐずと濁りゆく海の色をちらりと見て、言った。
ニーユ 「俺とミオの海は、ここだよ。ここにしかない――ここに、作る」 |
“ミオ” 「……ここ、に?」 |
ニーユ 「だから俺は、ここに残る。ミオと一緒には行けない」 |
ニーユ 「……俺まで行ってしまったら、ここにミオのいた標しを、誰も残せないよ」 |
俯いた少女の頭から、右腕から、開いたままの花がぼとぼとと落ちていく。
“ミオ” 「……ごめんね、にひと。ミオ、わがまま言って…それに、嘘つき、なんて……」 |
ニーユ 「いい。俺だって、最初にミオを連れてきたのが、俺のわがままだ。だからいい」 |
あのときもう一歩前に踏み出せていれば?
キリがない。だからこそ、キリをつけなければならない。
ニーユ 「――だから、行ってくれ。君たちの海へ行くんだ、……ルイと、一緒に。行きなさい。……それが俺の、最後のお願いだから」 |
見る間に蕾が生えてきて、再び花が咲く。そのとき、アルラウネの少女の描く表情は、もう別人のものだ。
“ ” 「ん……分かっ、た。一緒に、行く。にひとのお願い、だから……ちゃんと、聞くね……」 |
ひび割れた装甲をつなぐように無数に張り巡らされた植物の蔦と根と、表面張力でその場に留まっているような液体が、ゼービシェフを立たせている。ハイドラとしての形を保たせている。
“ ” 「あのぉ……にひと、お兄ちゃん?」 |
困ったような顔をされた。ミオによく似ていた。
ニーユ 「いや、いいんだ……そうだ。そうだ、ミ……じゃない、ルイ?」 |
“るい” 「うん!なあに?」 |
ニーユ 「君たちは、……君たちは、もう、行ってしまうのか」 |
“るい” 「……うんっ。だって、るいも、ミオも……もう死んじゃった子だもん。死んじゃった子は、あの世に行くの……そういう、決まりなの」 |
悲しい顔をしないでほしかった。そんなことを言っても、無理なのは分かっていた。お互いに。
ニーユ 「……なにか……持ってってもらうのは、できるかな。ミオのために……」 |
ニーユ 「だっ、あ、その……別に処分に困ってるとかじゃないんだ……」 |
“るい” 「え……それって、おそなえもの?いいよぉ!るい、持ってってあげる!」 |
“るい” 「えー、これだけでいいのぉ?」 |
ニーユ 「いや……それだけでいい。大丈夫だよ」 |
“るい” 「そっかぁ。……よぉし!るいにまかせてっ!」 |
何事もなく過ごせる世界を、次こそは彼女たちに望みたかった。いつかまた会えますように、輪廻転生の先でいつかまた。いつになるのかなんて、そんなことは知ったことではない。
何を言ったらいいのかわからない時間の中に、小さな足音が響いた。
ベルベット 「あたしは一向にいいけど、あなたが等身大のお人形遊びに励みたいってわけでもないんだから……ニーユ!」 |
アルラウネの少女がぎょっとした顔をした。
ベルベット 「忘れ物よ」 |
ニーユ 「あっ。……あっ、ああ、……そうだな。それはミオのだもんな」 |
ベルベット 「全くだわ。目的が達成されたんなら、もういいでしょう?ほら」 |
手を取る。双子が双子として、この世界で顔を合わせるのは、これが最初で最後。
“るい” 「うわぁー、びっくりしたぁ。えーと……ベルベットちゃん、だよねっ!ありがとねぇ、るい、たっくさん感謝しちゃうよ!」 |
ベルベット 「そうよ。あなたのきょうだいを最初に見つけたのもあたしなのだわ!感謝なさい!じゃあまたね、ルイ」 |
“るい” 「うんっ!それじゃあもう行くね、にひとお兄ちゃん!」 |
“ ” 「――待って。」 |
“ミオ” 「……にひと。あの、えと……えとね」 |
耳打ちをされようとしている。屈み込んだ、その次の瞬間だった。
――
――低い、低い、鳴き声がした。
知らない言葉の、知らない歌だ。次の瞬間には、続いていた頭痛も、そこにいたはずの『オカミ』たちも、忽然と消えている。
呆然と立ち尽くしていた。長い夢を見ていたような気がした。汗を拭おうとして手に取ろうとしたタオルがないことに気づくまで、もう数瞬。
『海に連れてきてくれて……一緒に、見てくれて、ありがとう。』
霧が晴れている。
霧が晴れていた。
迷いも後悔も怒りも憎しみも、すべてを飲み込んだ霧が。
ENo.61からのメッセージ>>
コルヴス 「――?」 |
パロット 「? どした、コルヴス?」 |
コルヴス 「今、歌が――聞こえた、気がしたんだ」 |
パロット 「んー? 俺様には聞こえなかったけど」 |
コルヴス 「君、昔からボクより耳いいもんね。なら、やっぱり気のせいかな」 |
コルヴス 「――でも、なんでだろうな、『海』の歌に聞こえたんだ。もう、聞こえないけれど」 |
ユリア 「……ミオ。私は行くよ、最後の戦いへ」 |
ユリア 「上手くいけば、私達は元の世界へ帰る。下手を打ったら、ミオのように残像になるかも知れない」 |
ユリア 「元の世界に戻ったら、残像領域での出来事は忘れるらしい。ミオの事は忘れない、と言った約束を果たせるかどうかわからない。すまない」 |
ユリア 「それでも、もし、奇跡というものが存在するのなら、信じたい」 |
ユリア 「心のどこかでは、ミオやニヒト、皆の事を覚えていられると」 |
ユリア 「……はは、夢見がちな事を言うなんて、私らしくないな。これもここでミオ達と話して、私自身が変わった結果かな」 |
ユリア 「何度でも言うよ、『さようなら』は言わない」 |
ユリア 「またいつか、どこかで会おう。ありがとう、ミオ」 |
◆戦闘結果
戦闘報酬
戦闘収入 3000
攻撃戦果補正0.88%
支援戦果補正0.93%
防衛戦果補正1.67%
撃墜数補正 0.3%
合計現金収入3115
--機体破損請求 -4130
--弾薬費請求 0
--整備控除修正額-3863
整備請求額 -2615
ユニオン費 0
◆格闘値が1成長しました
◆反応値が4成長しました
◆整備値が1成長しました
◆経験値が205増加しました……
◆素材が組織から支給されました……
攻撃戦果補正0.88%
支援戦果補正0.93%
防衛戦果補正1.67%
撃墜数補正 0.3%
合計現金収入3115
--機体破損請求 -4130
--弾薬費請求 0
--整備控除修正額-3863
整備請求額 -2615
ユニオン費 0
◆格闘値が1成長しました
◆反応値が4成長しました
◆整備値が1成長しました
◆経験値が205増加しました……
◆素材が組織から支給されました……
キャラデータ
名前
天ヶ瀬 澪
愛称
ミオ
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プロフィール
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半身(ワタシ)を、――返して。 * * * 注意:第5回以降、死亡許容状態で進行します。 * * * ★天ヶ瀬 澪(あまがせ みお) 哀しい瞳をした、碧い髪の少女の霊。13歳。 本人は幽霊と自称しているが、その姿ははっきりとしており、生気が宿っているように見える。 霊なので物や人に触れたり、逆に触れたりすることはできないが、 代わりに巨大なハイドラを動かすほどの霊障能力を持つ。 人見知りで口数も少ないので、一見大人しい性格。 13歳という歳の割には落ち着いた雰囲気を見せる。 しかし戦闘時には普段では想像もつかないほどの荒々しい一面も。 きょうだいの泪(るい)と再び出会うため、何処かにあると噂される”海”を目指している。 ☆X-11『ゼービシェフ』 澪が霊障能力で操っているハイドラ。およそ7m。 ずんぐりむっくりしたシルエットが特徴。 かなり昔の旧型であり、動いているのが不思議なほどの骨董品。 銃器類の扱いが苦手だが、反面頑丈さに長けており物理戦闘に向く。 澪は機体のことを正式名称ではなく、『オカミ』と呼んでいた。 現在、ニーユ・ニヒト・アルプトラの経営する整備屋、リーンクラフトミリアサービスに住まわせてもらっている。 Eno4 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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機体データ |
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1 | 腕部A | 力動腕ガツェレ [47/突撃態勢/突撃態勢] | ▼詳細 |
---|---|---|---|
2 | 軽ブースターA | 即動発動機ライプツィヒ [49/突撃態勢/突撃態勢] | ▼詳細 |
3 | 頭部C | 鰤頭のヘルム [51/耐粒/出力]《装備:6》 | ▼詳細 |
4 | パイルA | 突貫杭バーデン [42/耐霊/高握力] 火力[3372] 連撃数[1] 防御属性[霊障] 防御値[1148] 貯水量[388] 弾数[1] 武器属性[貫通] 異常追加[30] 消費EN[171] 金額[1260] 弾薬費[140] 重量[100] [物理格闘] *作者* |
▼詳細 |
5 | エンジンC | A1412型動力炉コーブルク [43/出力/出力]《装備:4》 | ▼詳細 |
6 | 腕部B | 爆導腕アルコナ [52/重出力/高握力]《装備:7》 | ▼詳細 |
7 | 腕部A | 速動腕ニンフェ [50/高機動/高機動] | ▼詳細 |
8 | 電磁アックスA | 紫雷斧オルデンブルク [51/重暴力/高握力]《装備:3》 火力[4058] 連撃数[1] 防御属性[物理] 防御値[428] 貯水量[202] 弾数[9999] 武器属性[漏出] 異常追加[15] 消費EN[2056] 金額[1391] 重量[301] [電子格闘] *作者* |
▼詳細 |
9 | 電磁アックスA | 超電磁兵装『デッドブレイカーII』 [51/重圧応力/重圧応力]《装備:9》 火力[4505] 連撃数[1] 防御属性[物理] 防御値[428] 貯水量[196] 弾数[9999] 武器属性[漏出] 異常追加[15] 消費EN[2107] 金額[1391] 重量[352] [電子格闘] *作者* |
▼詳細 |
10 | パイルA | 電熱槍シャルンホルスト [46/耐電/高機動] 火力[3805] 連撃数[1] 防御属性[電子] 防御値[1203] 貯水量[408] 弾数[1] 武器属性[貫通] 異常追加[30] 消費EN[181] 金額[1318] 弾薬費[140] 重量[100] [物理格闘] *作者* |
▼詳細 |
11 | 素材 | 対魔呪符44 [44/耐霊/---] 特殊B[560] [素材] |
▼詳細 |
12 | 重ブースターA | 重ブースター『セイルフィッシュ』 [40/幻想機動/幻想機動] | ▼詳細 |
13 | 操縦棺A | ミリアサービス式薄装棺『ルシオラ』 [45/幻想機動/幻想機動]《装備:1》 | ▼詳細 |
14 | --- | --- | --- |
15 | 素材 | 衝撃吸収板32 [32/耐物/---] 特殊B[320] 防御属性[物理] 防御値[50] [素材] |
▼詳細 |
16 | エンジンC | フィオリェートヴィ [37/出力/高握力]《装備:5》 | ▼詳細 |
17 | 電磁アックスA | 重斧『エグゼクラブル・エグゼク』 [48/重圧応力/高握力]《装備:10》 火力[4050] 連撃数[1] 防御属性[物理] 防御値[416] 貯水量[189] 弾数[9999] 武器属性[漏出] 異常追加[15] 消費EN[2038] 金額[1347] 重量[298] [電子格闘] *作者* |
▼詳細 |
18 | エンジンA | V-ENG-02A[フラジャイル・コア] [41/突撃態勢/突撃態勢] | ▼詳細 |
19 | エンジンC | E-C32HPG2 [50/重圧応力/重圧応力]《装備:11》 | ▼詳細 |
20 | 素材 | 衝撃吸収板37 [37/耐物/---] 特殊B[420] 防御属性[物理] 防御値[29] [素材] |
▼詳細 |
21 | 素材 | 限界機動プラン45 [45/突撃態勢/---] 特殊B[580] [素材] |
▼詳細 |
22 | 中二脚A | Infinity_on_High_Ⅱ [51/耐粒/重圧応力]《装備:2》 機動[1144] 跳躍[237] AP[2305] 旋回速度[699] 防御属性[粒子] 防御値[670] 貯水量[279] 積載量[2500] 消費EN[337] 金額[1391] 重量[1051] [二脚] *作者* |
▼詳細 |
23 | 補助輪A | 幻想機動補助輪 [41/幻想機動/幻想機動] | ▼詳細 |
24 | 電磁ブレードA | 電磁ブレード『タルワール』 [39/突撃態勢/耐粒] 火力[2697] 連撃数[1] AP[-39] 防御属性[粒子] 防御値[953] 精度[94] 貯水量[295] 弾数[9999] 武器属性[貫通] 異常追加[30] 消費EN[1458] 金額[624] 重量[200] [電子格闘] *作者* |
▼詳細 |
25 | 素材 | 軽量化プラン52 [52/重量軽減/---] 特殊B[720] [素材] |
▼詳細 |
26 | 中二脚A | 重圧中二脚『キネム』 [45/重圧応力/重圧応力] 機動[922] 跳躍[221] AP[2127] 旋回速度[650] 防御属性[物理] 防御値[582] 貯水量[257] 積載量[2500] 消費EN[354] 金額[906] 重量[1090] [二脚] *作者* |
▼詳細 |
27 | 重ブースターA | ねこまっしぐらZ [51/高握力/高握力]《装備:8》 | ▼詳細 |
28 | 補助輪A | 電磁駆動装置『ティエンポ』 [51/高握力/高握力] | ▼詳細 |
29 | --- | --- | --- |
30 | --- | --- | --- |
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