ENo.0398　“Neon”

　
「グラン！ グラーン！」

戦闘を終え、機体から降りてすぐ。
ハンガーに響き渡る威勢のいい声に、ため息をつく。
無視して行ってやってもいいが、そうすれば更にしつこくなることを経験として知っていた。
……振り向くと予想通り、目に飛び込んでくるのはピンクのメッシュだ。

ぐっと息を止めて備える。
大方、文句でも言われるのだろうと思ったから。
……ずっと積んでいた二連の速射パルス砲を、ヒートストリングとパルスAに差し替える、と。
そのアセンを決めてからこちら、乗り込む直前までずっと。
ぶーぶーと絶えずわめき立ててくれたことは、グランの記憶に焼き付いている。

───しかし。


「さいっっっこう！！！」
「…………は？」

目を輝かせた少女のその声に、思わず間の抜けた声が漏れる。
そんなこちらにもお構いなしに、彼女はまくし立ててくる。
出会って以来ずっとこうだ。

「聞いて、グラン。あたし、ずっとバンバン撃つのが楽しかったの」
「………はあ」
「どんどん弾数は減っちゃうし、つまんなーいって思ってたの」
「散々聞いたな」

茶々を入れるような皮肉も、どうやら興奮する子供には伝わらないものらしい。
ばっと両手を広げて、大仰な身振りと共に、アウラは叫ぶ。

「でも！」
「うおっ」

軽く背を逸らす。
もちろん少女は気にも留めない。

「見た！？　あたしが撃って、命中した時！　……思いっきり相手の機体がひっくり返ったの！」
「……………」

……当然、見ていた。
仮にも操縦担当だ。射手である少女と同程度には動体視力を持ち合わせている、という自負がある。
しかし。

「あれを見た瞬間、思ったの。ああ───これ……素敵！って！」
「……………………」

きらきらと輝く瞳。
何かに酔ったような声音。
浮き立つようなその調子。

………嫌な予感がむくむくともたげる。
これは───これは？


「だからね、ねえ、次回もあれでも───あ！　でももっと強いのがあるならそっ」
「────」
「ちのほう、がっっっ！！？」

気づけば、勝手に手が動いていた。
少女の額を、指先でぴん、と弾く。

「………………やっちまった………」

そのまま、踵を返す。のけぞる彼女に見向きもせずに。



まずいものを、目覚めさせてしまった。
そんな思いがぐるぐると頭を巡る。
………ただバカみたいにぶっ放すだけでも、十分にタチが悪かったのに。

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