ENo.0029　猫目 黄金

　件名：準備は万全

　From 黄金
　To 琥珀

ハロー兄貴。そちらは元気？そうだといいな。

こっちの世界はね、正直に言えば寂しいよ。錆びついた機械と霧の荒野。とても綺麗な世界とはいえない。人々も、治安も、良いとは言い難い。生き辛い世界だ。この世界を取り巻く闘争は、俗に「霧戦争」と呼ばれているみたい。

残像領域。あの日突如として現れた異界への扉……とても驚いたけど、べつにそう珍しいことじゃないだろ？なにしろそういったモノを通ってきたのはこれが初めてじゃないのは一緒だった兄貴だって分かってるはずさ。でも今回は少し特殊だったからね。目の前に現れた扉は、どういうわけか僕意外の生命体を跳ね除けてしまう性質をもっていたから。こんなことを言うと怒るかもしれないけれどね、運命を感じたんだ。もちろん、一番初めに通った者を登録する機能とかがついていたんだろうけれど、そんなことは些細なことだ。
異世界は貴重な体験に満ち溢れている。だからそういった世界への調査は率先して行われるわけで、今回は僕がまだ13歳だったのもあって反対意見も多かった（一番反対したのは兄貴と親父だったね、ゴメンね）のだけれど、今僕はこうしてこの世界で戦う準備をしている。背を押してくれた師匠にはお礼を言わなきゃ……だからって、兄貴がお礼参りなんてしてないだろうね？喧嘩しちゃダメだよ。

これから、僕は武装した宗教団体の鎮圧に向かうことになっているよ。これから暫く睡眠を取って、起きたら出撃だ。ウォーハイドラに載るのも初めてだけれど、整備もちゃんとして操作系も僕好みに改造を加えた。何も出来ずに敗退するようなことにはならないよ。それに僕には青火がいる。波山の後継機、生命体を封じられた環境でAIである彼が例外的に許されたのは本当に心強いよ。だから大丈夫、絶対強くなって帰ってくるから。

……兄貴、やっぱり怒ってるかな？でも待っていてよ。今度会えるときを楽しみにしていて。
おやすみ、兄貴。



　--- 2017.3.10 ---