ENo.0093　メーネ＝"クルーク"＝フライス

私はメーネ。メーネ＝フライス。
ミドルネームの「クルーク」は、私の世界の「学び舎」において戴いた称号のようなものだ。

…そう、「私の世界」だ。
私は異世界からここへ飛ばされてきた。
私は元々、学者をやっていた。考古学者だ。あの日も、古代機械文明の遺跡を調査していた。
…そこで、転送装置の起動――あるいは暴走――に巻き込まれた。
目の前が真っ白になり、気付けば薄く霧の立ち込める荒野、というわけだ。

元の世界に帰る目処はついている。私の世界には魔術が存在しており、
その中のとある術式を実行すれば良い。良い…のだが、その術に使う触媒というのが、
この世界でもとてつもなく高価なのだ。
まあ、世界を跳躍しようというのだ。そんなにポンポン実行できるものでもない。
幸いにも、私はエルフの端くれだ。その気になれば何百年でも生きられる。
金を稼ぐのは気長にやればいい。そう思って、とある企業の事務員として応募した…のだが。

何故か。
巨大ロボに乗って。
戦わされる羽目に。
なった。

繰り返すが私は学者だ。非戦闘員だ。
できるわけないだろバカ。
古代遺跡の調査も、いちいち護衛を雇っていたんだ。
魔術は使えるが、戦闘用のものじゃない。

……だが、報酬は良い。完遂できれば、短い期間で資金を用意できる。
幸いにも、単独行動は無いらしいので、戦場の隅っこで適当に撃って
働いているフリをしていれば良いだろう。

……などという甘い気持ちで、私はハイドラに乗り込むことを了承した。
…了承して、しまったのだ……。