ENo.0367　エリオット＝ウツロギ

　約束事が嫌いだ。
　この霧の中、そんなものを律儀に守るやつがいるはずもない。

「ようエリオット。今日はお前の番だろ？ とっととくたばれよ。俺ァここんとこず～っとお前が死ぬ方に張ってんだ」
「ああ？ この前トムの代わりに俺が出たろう。なんでまた俺が乗らなきゃいけねえんだ」
「今日はお前の番だからさ！」

　そう言ってゲラゲラと嗤う髭面の男。
　勢い良く笑ったものだから、ジャーキーのカスやらエールの泡やらがカウンターに飛び散る。

「俺はおめえのその臭え息がなんとかして止まらねえもんかと腐心してるんだがな。口を閉じろ、ピグレット。そんでアルコール漬けになってとっとと死ね」
「ああ？ 誰の口が臭いって？」
「ゲハハ、そりゃおめえさ！」
「口の臭いピグレットとクソッタレの酒場に乾杯！」

　酔っ払い共が叫び、ジョッキをぶつけ合う。
　クソッタレ共が。俺の酒場のどこがクソッタレだってんだ。

「今日もまたエリオットの番だ！ さあ、生きるか死ぬか……張った張った！」