ENo.0367　エリオット＝ウツロギ

　身体は嫌いだ。
　壊れたとしてもハイドラみてえにスパッと換装できるものでもない。

　俺たちハイドラライダーの”成れの果て”は、それぞれ昔少しはならしたライダーだった
（と、全員が口をそろえて言っているが、俺は信用ならないと疑っている）。
　しかし何らかのヘマをやらかして、今はこうしてこんな吹き溜まりで燻っている。
　ハイドラライダーなんて輩は、元々『それしかない』奴らの集まりだ。
　俺は元々学があるし、目端が効くのでこうしてクズどもをアルコール漬けにして金を稼げているが……
　文字通り『それしかな』かった奴らには、吸い上げるための金さえなかった。
　そういうわけで、俺たちは共有のハイドラを購入した。
　ジャンクギリギリのパーツを寄せ集めて、なんとか動く簡易品。
　現役時代の自分が見たら、鼻で笑って二秒で沈めていた類のオンボロだ。
　持ち回りでライダーをやらせて、企業連からの仕事をこなせばそれなりに金が入る。
　そうして手に入れた金を、俺が吸い上げる。
　全く素晴らしいシステムだ。そうだろ？
　そのはずだったんだが、最近はどうも、俺ばかりが乗せられている気がする。
　まあ、いい稼ぎにはなる。それならば世はこともなし、だ。

　ツギハギのハイドラ、不格好なそいつは、霧の中、ドブ溜まりをゆくカエルのような見た目だった。
　だから、そいつの名前は《フォグフロッグ》という。

残像領域の端、無法者やハイドラライダーの集う酒場。
人の生き死にを賭けのタネに、今晩も乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
合成アルコールと正体不明のジャーキーが売れ筋。
まともな人間は寄り付こうともしないだろう。