ENo.0201　17番

「巨大化したとある宗教団体が武装化を始めているようだ。
　今のうちに手を打つ必要がある。アジトを壊滅させてくれ」

その単調な注文に、私はただ「comprendere la.」とだけ返すのだ。
オーダーとしては、微塵も難しい要素など存在していない。
ただ、いつものように敵を探し、味方にその配置を伝える。
極めて簡単で、何の忌避感も躊躇も存在しない、単純明確なはずのオーダー。

――の、はずだった。
違和感を覚える必要のなかった注文に、私は一瞬だけ躊躇った。
どうして。自分の思考が、世界のなによりもわかりやしなかった。

アジトを壊滅させる、という部分は何も問題がない。それは仕事だ。
ならば、違和感を覚えたのであろう箇所はひとつしかない。
”巨大化した宗教団体”。ただ、その一部分だけが嫌に引っかかったのだ。

宗教団体が巨大化することがあるのはわかる。
今や世界中を覆い尽くしている（と、私は思っている）宗教団体などいくつあるかわからない。
だが、武装化となると首を傾げざるをえない。
基本的に、宗教団体に武装化する理由というのは多くないからだ。
多くないというのは誤りかもしれない。私には想像がつかない。その理由がわからない。

正しく言うのであれば、興味を抱いているのかもしれない。
想像がつかない何かを、自分の手で壊さなければいけない。
それが、ひどく惜しいことのように思えてしまっている自分が、わからない。

これを書いている数時間後には、きっとその宗教団体のアジトは壊滅していることだろう。
その一助をするのが、私は仕事であっても苦痛に感じている……のかもしれない。

考えるのをやめよう。きっと私は、ただ疲れているだけなのだ。

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