ENo.0245　クリス・バーミリオン

「……ちょっと。なによコレ？」

ユーティラスの装甲の破損を先日修理したのだが、装甲の継ぎ目の辺りが粘液でヌメってる。
と言うか。まるで血を流してるような。朝からテンションがどんどん下がってくる。
確か裏は肉が詰まってて、被弾時に少し抉れたんだったか。
そのときは傷口が焼けてこんがりしてたから、見てみぬ振りして新しい装甲を被せてしまったのだ。

まずかったかもしれない。でもなぁ。アレはムリだよ。

だが見てしまったモノは仕方ない。観念して装甲をはぐってみる。


どちゃっ　びちゃちゃっ


少し隙間を開いたら、赤い粘液と肉片のようなモノが溢れ出てきた。

あぁ。コレは。アレだ。頭が砕けたときみたいなヤツ。なんだか人肌程度に暖かい感じが。
驚きはしなかった。ただちょっと、やり場の無い怒りが湧いてきただけだ。

「誰が片付けると思ってんだよ……」

こんなシーンを誰かに見られたら誤解を受けそうだ。私は何もやっていない。
いけない。だんだん嫌になってきて意識が散漫になる。早く中を確認して

ガッシャーーン

「あヒぇッ！！」

背後の音に驚き身がすくむ。強盗か！死ね！いや銃で撃たれる！死ぬ！

まず身の安全を。

一瞬の硬直の後、物陰に隠れようと身を翻し。

滑ってこけた。



違うの。足元がヌルヌルしてて。　フフ…　さっきの粘液で何もしてないのに全身真っ赤。

ハハハ。殺せよ。


……あれ？　誰も居ない？　いや。

ネコだ。この前のネコ。ガレージ脇の廃材を蹴倒したらしい。

驚いて損をした。ホントに強盗だと思ったものでね。
いや恥ずかしいね。いま私顔真っ赤だよ？　見てたのがネコで助かったよ。
コケて体が痛いし、服がさらに粘液で汚れたが、そんなコトもうどうだっていいコトだ。

私は憎い相手にも言わないような暴言と工具をネコにブチ撒けた。




ネコ。この前から頻繁にガレージに侵入してくる。どこから入ってくるのか、穴でもあるのか。
すっかり居ついてしまい、我が物顔でガレージを闊歩している。腹立たしい限りだ。

餌付けで大人しくできないかとも思ったが、私の出す飯に見向きもしない。
ネコ畜生にすら相手にされない飯を食う私。惨めになるから一口でも食べて欲しかった。


あぁ、そうだ。埃と粘液でボロ雑巾以下になった惨めな私は、何をしないといけないか思い出した。
機体のはぐった装甲部分。粘液の出所を覗き込む。なんかグロイけど今の私は何も感じなかった。

中は血管のようなものが絡まり装甲と癒着していた。所々に肉のコブが形成されている。
前に見た焼けた傷口部分もしっとりと粘膜が覆っている。

これは。再生している。　のだろうか？　頭いいヤツ、誰か教えやがれ。

そうだ。直るんだ。いや治るが正しい？　さすが変態技術者の謎の技術。自己再生だ。

そうか。勝手に治るのかぁ。きっとそうなんだ。私は信じるよ。信じる。

私は装甲をはめ直しバーナーで溶接した。これでも簡単な工作はできるのだ。
すき間から何も漏れないように。厳重に焼いた。念入りに焼いた。とにかく焼いた。
焼いてる間中、肉の焦げる臭いがしていたが知ったことか。

終わった。私は強盗に荒らされたかのようなガレージをそのままで後にした。


結局のところ。今日は何も進展してないな。無駄な半日を過ごした。
もう半日はふて寝した。無駄な１日だった。

本当に無駄な１日だった。



枕が涙で濡れた。

１から始める培養装置！
整備技術の勉強に特化した研究ユニオンだよ。
エンジンの研究とかも副業でやるつもり！

※本ユニオンは毎回、整備を５振りです。
※ユニオン購入は経験値＋１固定。整備の高みを目指します。
※10～15更新くらいから死亡許容にすると思います。しばらくは死亡失踪の心配は無いです。