ENo.0316　リビー・ニエロ

　
「リオ、起きてるか。ちょっと確認したいことが……」

夜半にリビーが訪ねた時、リオのガレージはしんとしていて、居住部分のライトもバーントイエローを据えてある部分の天井照明も消えていた。ただ、バーントイエローそのものの一部分が、うっすらと明るい。
広いガレージを横切って機体に近づき巨躯を見上げる。数多連なる異形の脚と人に似た上半身を持つ、リオの一部。リビーの僚機。
リビーの視線の先では操縦棺が開き、そのあたりから淡い光が漏れていた。おそらくスリープモードのゆるい点滅。ふん、と咥えたタバコを一度上下に振って、リビーは身軽な動きで機体に取り付き、ひょいひょいと小山のようなそれによじ登った。

リオはバーントイエローの操縦棺の中に設えられた操縦席のシートで、丸くなって眠っていた。

【こんばんは、リビーさん。リオはご覧の通りなんですが、何かお急ぎのご用です？】

パネルにモンテズマからのメッセージと緑色の鳥を模したお馴染みのアイコンが表示される。音声はない。AIなりに気を使っているらしい。こん、と指先でパネルを叩いて、返事の代わりにした。リビーも声を出す気にはならなかった。すると画面には無音のまま簡略化された鳥の形が大量に飛んだ。緑の光の乱舞。
操縦棺で眠るリオは静かだった。どこか胎児を思わせる格好で、ただ静かに、静かに、何かから身を守るように密やかに眠っている。
リオは薄い毛布にくるまっているから、不思議な色合いの頭と閉じた目元くらいしか見えない。寒いのだろうか。ここはいつも霧が忍び込んできて、全てを侵し、浸し、冷やしていく。

リビーはがりがりと頭をかくと、無言でバーントイエローの機体から飛び降りた。勝手知ったる様子で、足早に居住部分のパーテーションへ向かう。回り込むとリオが寝起きしているベッドがあった。

「……多分……、ああ、あった」

予備の毛布を掴み、もう一度バーントイエローのところへ戻る。今度も危なげなく機体を登ると、丸まったリオの上からばさりと毛布を足した。霧は一向に晴れない。それでも一枚よりはましだろう。

【おや！　お手数をおかけして申し訳ありません！】

緑色のアイコンが音もなくちかちかと光る。もう一度パネルを指先で叩くと、そのままリビーはバーントイエローから飛び降り、歩き出した。今度はガレージの出入り口へ向かって。
白い霧が漂う中、リビーの背中が薄れてゆく。咥えた煙草の明かりだけが、小さな灯火のように瞬いていた。



（静かな夜を）

（静かな眠りを）

（どうか）


（どうか、と）

　

　
　
リビーが『黒金乱眼』を置いている格納ガレージ。
薄暗いガレージの隅には古いマットレスと毛布、多少の荷物が無造作に転がっており、ここで寝起きしているようだ。
　
　
ガレージの中央に鎮座するのは『黒金乱眼』。
機体が置いてある部分はきちんと照明や整備機器、および簡易のテーブルと椅子があるが、それ以外はがらんとしていて薄暗い。
　
　
　
【ユニオン基本】
・格闘上げ＋ロールプレイ舞台。
　情景描写のお供にどうぞ。
　
・参加希望の場合はENo.316までメッセージをいただければ次回更新時に随時許可宣言予定。
　（メッセージ内の最後に【希望】と入れてくださると分かりやすくて助かります）
　未参加のまま、情景を利用したメッセージのみのやりとりも可。
　
【ユニオン活動】
・格闘
　
【ユニオン購入】
・機動力+3%
・経験値+1