ENo.0176　クロムノート・ウェルサキオン

「――そりゃ美味い拾いモンをしたな」

ボロい作業着を着た男は、ヤニで黄ばんだ歯を見せるようにクロムに笑いかけた。
クロムの方も口端を上げながら、それに頷きを返す。
二人の周囲には先程、クロムが簒奪した中型機のパーツが所狭しとばかりに並べられていた。

「こういうのばっかりなら俺も助かるんだけどな」

「はは、そうだな」

…パーツ漁りといっても相手は大型の機械だ。安全に取り外すには知識や技術はもちろん、かなりの時間と労力がかかる。
その時に役立つのがハイドラだった。パーツの応用性が極めつけに高いため、装備さえ用意しておけば作業機体として十二分な活躍をしてくれる。
クロムや他の墓漁りの多くもハイドラに搭乗して作業をしている者がほとんどだった。

しかし、この方法には一つ致命的な欠点がある。
ハイドラは非常に汎用性が高く、高性能な割には入手経路が限られている……つまり、需要に対して供給が意図的に絞り込まれているのだ。
それはつまり、ハイドラ自体が一つの財産ということである。墓漁りをするようなまっとうでない連中にしてみたら、パーツ漁りなどするよりも誰かのハイドラを奪った方が圧倒的に効率的なのだ。
だからクロムは、墓漁りは夜間や早朝などに活動し、他の連中に見つかり易い日中時間帯での墓漁りは避けている。作業用パーツを装備したハイドラの戦闘力は、そう高くはない。襲われたらひとたまりもないからだ。
まして相手が、戦闘用の装備をつけたハイドラならばよほどの実力差・性能差があってもまず勝てない。

ただ、時折ハイドラの価値について頭が回らない者が、今回のように堂々と作業する事もある。そういった連中は悪漢共にとって、絶好のカモとして認識され、クロムのように強盗行為を働く者も少なくない。

「ま、さすがに今回みたいなバカは滅多にいないさ。大体は用心して行動してるからな」

「用心といえば、アシはつかないだろうな？　死体とかは始末したのか？」

「戦場に死体が１、2体増えたところで誰が気付くんだ？」

「…それもそうだな。…と、できたぞ。買い取り金はこれでいいか？」

男が示した額を確認し、クロムがああ、と頷きを返す。

「これで交渉成立だ。ありがとうよ」

「どういたしまして。…じゃ、その金はいつものように武器を買うのに使ってくれ」

「あいよ。……しかしアンタ物好きだよねえ。買った武器をバラまいたところで、アンタに得はないだろうに」

「…いいや、あるさ」

クロムの口から漏れた「戦争が続けられる」という呟きが男の耳に入る事は、なかった。

戦争！　戦争！　戦争だ！
喜べよ下種畜生ども。地獄のラッパが響いてきたぞ。
俺達が呼ばれている。
多くの血を流すため、多くの命を踏み潰すため、多くの死を広げるために。地獄の戦鬼が。

よう戦友！　アンタが求めるのは血か？　金か？　闘争か？　栄誉か？　はたまた正義なんて求めてるのか？
まあ、いいさ。どれだって。御大層な理由だろうがクソみたいな理由だろうが、やる事も同じなら逝く場所も同じなんだからよ。

どうあれ、ここにいるって事は俺と同じく戦争をより盛り上げたいってイカレ共だ。
死体と涙と恨みと鉄屑を空高く積み上げたいって、死んだら地獄行き間違いなしの畜生共だ。

同じ死体を漁る野良犬同士、せいぜい仲良く分け合っていこうぜ、なあ？

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格闘反応な命が葉っぱ勢のあなたに。
ユニオン活動は格闘×3　反応×2 → 格闘×2　反応×3の順で更新毎に変更していきます。

10人の状態で死亡者が出た場合、また2更新以上行動しない場合は参加許可を外す可能性があります。ご了承ください。

ユニオン購入は何かしら意見あるまでは機動力＋3%を予定しています。