ENo.0326　〈家族〉

何処かにいる。
近くにいる。
この大きな鉄カゴのどこかに、母さんとエマと、セリーンさんがいる。
予感。霧の中で産まれた不安が見せた願望なのかもしれない。
自分がこの鉄くずの中に居る現実から自分の心を守るための妄想なのかもしれない。

けれど、感覚が、たしかに俺は家族の息吹を感じた。
父さんは？父さんはどこだろう。
そうだ、父さんが俺を鉄カゴの中に入れた。
俺はつまり、この中に居るはずの家族を探さなくてはならないのだろうか？
父さんは、そういうつもりなのだろうか、
けれど、多分ここ、コックピットなのか？
何もない、ただ人を入れる狭い空間。
俺は動けない。指先はひどく冷たい。
足の感覚はない、喉は震えるばかりで、なんともまったく、役立たずになっている。
見えるのは霧ばかりだ、霧とたくさんのロボット、炎、音、光、お坊ちゃまを守ります。
セリーンは家族を守ります。セリーンは家族を守ります。セリーンは家族を守ります。
熱線が通り過ぎていった。
敵だ、あれが敵のはずだ、そう、ミサイルを投げてやれ、
炎と光が、霧の中に消えていく。