ENo.0367　エリオット＝ウツロギ

「君たちの戦いをダシに賭けを行うようだ。気にせず全力で戦ってほしい」
「あ？ なんだそりゃ」
「平たく言えば、とあるお偉方のお気に入りが先の要塞攻略で潰れてしまってね。その代役を探してるって訳さ」
「そうかい。そいつはよかったな、クソッタレ。失せな。誰が好き好んで爺共の賭けの種になるかよ」
「お気に召さないかね？ だが君がいつもやっていることだろう？」

　仲介人が笑みを漏らした気配が、モニター越しに伝わってくる。

「笑えねえな。誰だ、テメエは」
「仲介人だよ。君のようなライダーに、依頼を持ち込む」
「仲介人がライダーの素行まで調べんのか？」
「私が調べるのは、ライダーの戦歴だよ」
「ならテメエはどうして――」
「それだけ君は有名だということだよ、『ホルニッセ』」

　息を飲む。
　苦味が喉を焼くような感覚。

「……その名をどこで知りやがった、テメエ」
「君は有名だよ、ホルニッセ君。君が思っているよりずっとね」
「俺を、二度と、その名で呼ぶな。殺すぞ」
「うへえ、怖いね。わかったよ、気をつける」
「ついでに二度と連絡をよこすな」
「依頼は？」
「断る」
「君の愉快な酒場に、うっかり榴弾が飛んでくる、なんて事故が起こらないといいが」
「テメエ……！」

「君に拒否権はないよ、エリオット君。せいぜい踊ってくれたまえ」

残像領域の端、無法者やハイドラライダーの集う酒場。
人の生き死にを賭けのタネに、今晩も乱痴気騒ぎが繰り広げられている。
合成アルコールと正体不明のジャーキーが売れ筋。
まともな人間は寄り付こうともしないだろう。

マスターと美女の会話を聞こうと、普段よりも少し静かになっている。盗み聞きというには、あまりにも堂々としているが……