ENo.0406　ファイブカード

　
新しい仲介人から“仕事”のリストが送られてきた。
どうやら好きに選べということらしい。

それにしてもどれもパッとしねぇ依頼なことだ。
廃工場のゴロツキどもの掃除に、墜落した輸送艦の保護に、代理戦争の駒に、闘技場の見世物に。

仲介人───メフィルクライアとかいう奴の言うとおり、しばらくはこういう小遣い稼ぎの傭兵稼業が続くんだろう。
いっそバカンスにでも行きたいもんだ。



操縦棺の天井をつうと撫ぜる。いつもと変わらぬ、冷たく、硬く、確かな手触り。

この機体をいつまでもそんなことに使うのは勿体ねェ。
俺もお駄賃をもらって尻尾振ってるような暮らしはしたかねェ。

じゃあ独り後ろ盾も無く遺跡の数々を巡って漁って荒稼ぎでもするかと言うと、
そんな真似の出来るようなご時世じゃァないってのも身に沁みている。
鼠が一匹でうろついていたらあっという間に喰われちまう。

大概な面倒事ばかりだが、今は付き合ってやるしかねェ。世知辛いもんだ。



だが。
心の内のずっと深く、どこか奥の方で、こういう“仕事”は良くねェと、早いうちに身を引けと、
命が惜しけりゃとっとと逃げろと、そんな声が微かにざわめいている。

霊感だとか虫の知らせだとか、そんなモノにゃとんと縁の無い身なんだが。
そいつは胡乱な声色で俺に呼び掛けてきやがる。
───これはいつか俺の身を滅ぼす行いだと。

……くだらねェ。
くだらねェが、今はほんの少しだけ、田舎に引っ込んで犬のブリーダーでもやって過ごしたいってな気持ちも分かるような気がしている。

年かね、全く。

かつての乗り手たちの遺したもの。

今は霧深い荒野に広がる射撃訓練場としてここに在る。
晴れ間のある時分には、乾いた発砲音が繰り返し響く様も聴き取れる。