ENo.0493　陶玉

―開け放たれた窓からは、うっすらと霧が流れ込んでくる。
壁紙は湿気で腐敗したのか、その下のコンクリートが顔を覗かせており、
殺風景な部屋の風景を、更に寒々しく見せる。

行き交う人もなくなった廃墟群の一角。
今は行く当てを無くした少年ひとりを支配人とした、
ここは廃ホテルのひと部屋。

ひどく音程外れの鼻歌が響いている……。


[解析中...]
[マリリン・マンソン？]
「ン、わかるもんだな。スゴイスゴイ。」
[tao-yuがクリスティアーノ・ロベッロの下で勤務した際にデータを収集.]
「そう。僕もあのとき。狂ったみたいに流し続けるモンだから覚えた。」
[覚えたと形容するには再現性の低さを指摘.]
「せんでええわ。やかましい。」


*
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薄暗い部屋には、モニタの反射光に照らされる二人の影。
旧時代的なオーディオ機器からは、部屋を揺らすような大きさで音楽が流れている…。


「…………ヘイ、」
「…………ヘイ、クリス？」
「……。」
「きみが熱心なマリリン・マンソンの信奉者という事は、理解が出来たんだ。でもね？」
「……。」
「僕はさ、最低限の労働環境は保証されたいという希望があるんだ。」
「……。」

彼は陶玉の発言と被った部分を巻き戻して再生し直す。

「…………あ？」


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*



「……………。」
「アイツ探さなくてもいい気がしてきたな。」
[領域での活動目標を再設定しますか？]