ENo.0261　Solitus

操縦棺。脚部。頭部。砲塔。機関砲。妨害装置。ブースター。エンジン。レーダー。
一つ一つを丁寧にチェックし、損傷箇所は修理していく。
ソリトゥスと共に出撃する前と戦場から戻ってきてからの二回、カナエとソーナはソリトゥスのパーツを全て確認していく。
ウォーハイドラにとって命といえる部分はエンジンだが、レーダーも第二の心臓だとカナエは考えている。
それはソリトゥスが索敵を得意とする索敵機体であることが一番の理由だ。
戦場を見渡し、仲間にそれを伝える目がなければ、ソリトゥスは戦場で十分に力を発揮することができない。

「……うーん」
「……テイ？……どうしたの？」
「んー……そろそろパーツをどれか新しくしたほうがいいかなって思って」

不思議そうに首を傾げたソーナへ返事をしながら、カナエはソリトゥスの脚部を撫でる。
ソリトゥスのパーツは定期的に入れ替えてはいるが、それでも初期の頃に作ってからずっと変わらずに使っているものもある。
――敵の攻撃も激しくなっていた今、古いパーツを使い続けることは危険かもしれない。
一瞬の油断が命取りになるのが戦場なのだから。

「新しいパーツ……」
「そう。ブースターはマーケットで注文するから届き次第入れ替えるとして、あとはどれにしようかなって。本部から送られてきた素材もあるし」

ちらりと部屋の片隅に未開封のまま積み重ねられている素材に目を向ける。
ソーナは無言でカナエを見て、ソリトゥスを見上げて、もう一度カナエを見た。

「……だったら、砲塔にしてあげて」
「砲塔？」
「……うん。……最近、上手く動かないらしいから」

ソーナの唐突な言葉に目をぱちくりとさせたが、カナエはすぐに頷いた。
ソーナには機械たちの声なき声を聞き取る耳がある。
カナエにはわからないソリトゥスの不調も、ソーナは気づいて伝えてくれる。
一人だけでは気づかなくて手が行き届かない場所も、ソーナと二人ならカバーすることができる。

――カナエがソーナと一緒にいて心の底から助かると感じるのは、こういうときなのだ。

「よし、砲塔ね。わかった。新しく作るから待ってて」
「……手伝うこと、ある？」
「んー……じゃあ、使ってないパーツの中からもう使わないだろうなって思う古いパーツを見繕って持ってきて。俺は送られてきた素材の中から合いそうなのを選ぶから」

こっくり頷いたソーナがパーツを見繕いにいくのを横目に見て、カナエも未開封のまま放置されていた素材の箱へ手を伸ばす。
内容を確認しながらパーツを選ぶ間、カナエの口元にはずっと笑みが浮かんでいた。

――ああ。
これだから、ソーナと一緒にいるのはやめられないのだ。