ENo.0592　アンドリュー・ツォン

ナース服を手に入れた次の仕事では、もちろんナース服を着て出撃した。

肌なじみの良い生地は肌へのフィット感も抜群で、予想通りパイロットスーツとして使用することにも何も問題が無かった。その着心地の良さは先週思わず、勢いでAmaz●nレビューを書き込んでしまったほどだ。

もちろん、Am●zonで適当に見つけた適当なナース服にレビューをつけただけだから、マーケットで俺にナース服を売ってくれた人とは全然関係無い。バレたら何でこいつ何も買ってないのにめちゃくちゃありがたがってレビューなんて書いてんだ？と怪訝に思われるだろうけど、まあ、それはそれって感じかな。

今もこうして一人でナース服を身に着け、心静かに日記をしたためていたら、レビューを書きたい欲がムラムラと沸き起こってきた。伝えたい。この思い。この良さを。ナース服の素晴らしさを。サテンのテカテカした生地の肌触りの良さやスカート丈の絶妙さ、優しいピンクの色合いの深甚さや全身のシルエットの玄妙さ……。

俺は深くため息をついた。この気持ちを誰彼かまわず伝えたい。レビューを書きたい。そう思ったら手が勝手に動き出して、俺はPCを立ち上げ、Ama●onのページを開いていた。

流れるように、先日レビューをつけさせてもらったのと同じナース服のページを開いた。そして新たにレビューを書き込もうとしたとき、俺は驚くべきものを目にした。

先日俺が投稿したレビューに、追加で文章が書き込まれていたのだ。





『レビュー主の仇です。

レビュー主は大満足の様子でこの商品に五つ星をつけておりますが、レビュー主は当商品を購入したわけではありません。

このレビュー主は大変どすけべですので、大方べつの所でナース服を購入し、自ら着用するなどして興奮してしまい、勢いで全然関係の無いこちらにレビューを書き込んでしまったのだと思います。

ご迷惑をおかけしてしまって大変申し訳ありません。今後このようなことをしないよう、レビュー主にはよく言って聞かせたいと思います。評価は五つ星のままにさせて頂きます。』




椅子を蹴倒して立ち上がり、画面に鼻先を近付けるようにして俺はまじまじとその文章を読んだ。

俺の仇を名乗る女が、俺のレビューに追加の文章を書き込んでいる。俺は震えた。今まで影も形も見えなかったあの女だが、もしやずっと俺の行動を監視していたのか。俺のA●azonのアカウントすら監視していたというのか。メールアドレスやパスワードも把握されているというのか。もしかして、ツイッターとかブログのコスプレ用アカウントとかもばれているというのか。えっ、どうしよう、めっちゃ怖っ。

いや、そんなことより――。

これはあの女が――俺の仇であるあのスカーレットが、この残像領域にいる可能性があるということなのか？