ENo.0068　リュミドラ・カラビネル・レギナルト

夢の中で、過去を思い返した。



酷い夢だ、ああ、思い出したくない夢ってあるだろ？

……なあ、相棒。
コロッセオは、な。

私は、本当は行きたくはなかったのさ。
竜魔族の中でも劣等の烙印を押された奴が、
戦って生き残れると思うか？

無理だ。無理なんだよ。
でもな、路銀稼ぎってなら―――

相棒の為なら死ねる。それがバディだ。
ま、爆散する前に緊急脱出装置でも動かすさ。

コロッセオで同じ戦場に立つ者達が、ああ、なんだろうな。
何でお前たちは―――殺し合いをするんだ？
潰しあいをするんだ？
どうして戦いを好むんだ？
生きる為か？
金の為か？
栄誉の為か？

どちらにせよ人族はやっぱり――――嫌いだよ。

だから私はお前たちの前に立つ。
やられ役として――――

それすらも駒としての動きだ。求められた動きだ。
屠られる役。
死んでも死なない意志を持つ者が出来うる、
手札が最悪の時の最後の手段。
屠られるまでに如何に稼ぎ、やってきた者を粒子で焼くか。

亡霊が突っ込んでくれば死ぬだろう。
バイオ兵器も、怖い物だ。

前に出るのが怖い。
相棒は前に出てほしいと言った。

信頼してなのか？
信頼してだ。

だから私は戦うんだ。
死に急ぎはお前たちの仕事だと。

私は相棒と共に路銀を稼ぐだけだと。
―――――高速増殖炉だけでは何もできない。
完全に不釣りあいだな。

さて。

頼むぜ、死ぬのも厭わない勇士。
私よりもランクが低いなんて、恥ずかしいからな。


―――――――――――――――――――――――
ギルデンロウをはじめとする名立たるランカー達との作戦会議は朝まで続いていた。
それを私はどうしようもなく酷い顔で聴いていた。
相棒は楽しそうだった。私は酒が飲みたかった。
……。

必要最低限の動き、な。
やれたら、やる。
やれなければ、鼻で笑えばいいさ。
人族が嫌いだから殺意はあれど、な。
霧と鋼鉄の鎧はそれも捻ってくるもんさ。
相棒は「気楽にやろう。ほら、顔が硬いぞ～」なんて言っていたが……。

終われば笑ってやるとも。

生き残った者達へ。
これから往く者達へ。
私たちは歌おう、今日この日があることを。
私たちは祝おう、今日この身があることを。

全ての生きとし生けるもの達へ。
健やかに、でもなく。末永く、でもなく。
ただただ只管満足な生と、満足な死が迎えられるように。

乾杯。