ENo.0268　ゴートリンデン

死人のような俺が、ふらふらとあの広場に行ったのは霧の濃い日だった。

そこには。
機銃で受けた傷もそのままに、長年を共にした愛機の姿があった。
『GOATLINDEN』
腹には愛犬の名が記されている。
家族向けの広場に飾られたと新聞か何かで読んだ記憶はあったが、
確かにそれは俺の戦闘機だった。

そう思うや否や。足が勝手に動いた。
かつてよくしていたような滑らかな動きでそれに乗り込む。
不思議なことにエンジンはスムーズにかかった。
疑問がよぎるが構わず操縦桿を引いた。
そのまま当然のように走りだし、霧の中を離陸する。

戦場以外で飛行機に乗ってみたいと、そういえば思ったこともあった。
愛犬を乗せて飛んだらどんなに楽しかったろう。

真っ白い霧で美しい風景のひとつも見えはしない。
だが安心感があった。
座り慣れたシートが、どこかゆりかごのように感じる。

俺は操縦桿をにぎったままうとうとと気づかぬうちにまどろんでいた。
夢うつつに、膝の上で欠伸をする黒い犬。


は、と気づいたのは高度の異常を知らせるアラートの音だった。
相変わらず視界は白かったが、計器は低空を知らせている。
地面に頭から突っ込んで行くのが分かった。
回復する時間はない。

（そうか、今度は本当に死ぬのか）
もう散々死んだあとだ、さほど動揺はしなかった。
それでも少しがっかりしたような気持ちで目を瞑る。


…そこから数分、経ったろうか。
アラートがぴたりとやんだ。
いつまでたっても激突しないことにしびれを切らして目を開けると、
計器はすでにあるべき高度を指していた。

（？？）

やがて霧を抜け、垂直だった視界は地面と平行に開けていた。
見たことのない場所を稜線に沿って飛んでいるのだった。

どこからか迷い込んできた雑種の犬。

遊んでほしそうにこちらをじっと見つめる犬。

筋トレをしていると腹に乗ってくる犬。

くんくん言いながら餌をねだる犬。

じゃれついてきては困らせる犬。



がいる体で。

常に見えない何かと格闘する人生。そこに犬が居てもよい。

決まりは特になし。
各自好きなようにエア犬。
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格闘5：機動力+3％

（出入り自由。申請お気軽に。