ENo.0131　大怪獣ファンタ

ゼットーー……ン
ゼットーー……ン
ピポポポポポ……

消灯後のガレージにうずくまる黒鉄の巨体が、まるで生命を主張するかのように息衝き、ときおり関節部にマグマのような橙光を走らせている。

ドーナツのようにぽかりと空いた顔面に無論、表情はないが。
後頭部にざわめく放熱線が踊る様は、さながら猛獣の怒髪のようであった。

ゼットーー……ン

ピポポポポポ……

音のない鳴き声がただ、繰り返され、そのたびにガレージはゼットンの色に淡く、照らされた。

ーーーーー

「アドルクっっ！！！
大変だ、ガレージがっ！！」

早朝、ファンタのいつになく慌てふためいた声がスタジオに響いて、2人の同居人を無遠慮に起こす。

目を見開いて、眼前の異様に息を呑むファンタ。
アドルクの機体にも、武器、火薬庫にも影響はなく、平穏なものである。
ただ、真正面… 機体搬出道路の巨大なシャッターが、まるで溶けかけのチョコレートのように引きちぎられており、その残骸は無造作に公道へ投げ捨てられていた。

凄まじい、怪力のなす業であり…
そんなことができる存在を、ファンタはひとつしか知っていない。

「ゼットン……！！」

忽然と姿を消した愛機の名前を呟いて、ファンタはしばし、何もできずにそこへ立ち尽くしていた。

大怪獣スタジオは、大怪獣製作所である。
（「大怪獣」をコンセプトとした、パーツ製作所だ、と申しております）
大怪獣は、でかく、強くあらねばならない。
（主に重量級ハイドラへ向けた、大出力・強装甲のパーツに取り組んでまいります）

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