ENo.0574　言語魔術師アリューカ

　アリューカは鉄塔を作っていた。
　ほぼ完成したところで、その先端には、アンテナとスピーカーを取り付ける。

「どうした？　建築業にでも就職する気になったか？」

　視覚の隅に陣取るうざかわ系マスコットキャラクターのオッティアの冷やかしも、全て無視して、アリューカは黙々と作業する。

　違法出力の電磁波塔。こいつをウォーハイドラと接続することで、霧の中に響き渡る大音声を放送する機械になる。

「僕は諦めないよ。パドが諦めていないなら」

　放送開始のトグルスイッチを入れる。バチバチと放電しながら、電磁波塔はアリューカの声を待ちわびる。

『僕はアリューカ。ことのはのアリーだ。この言葉が伝わっていると信じて放送する。パド、通信は繋がった。言いたいことも分かった。僕からの返信はこうだ。いつかぶん殴りにいく。あと、本妻の座には僕が座る。他の連中は張り倒すからそのつもりで。……パド、愛してる。愛してるから、僕は帰還をあきらめない。少しだけ……待っていてね』

「お前その告白、残像領域中に響いてるぞ……」

　オッティアは言うが、

「いいの。僕はもう決めたんだ。受信するだけなんて女々しいことはしてられない。幸いこの残像領域には霊障もある。伝わる可能性が0.01%もあれば十分だ」

　アリューカの決意は固い。

「僕はただ待っているだけの僕っ子じゃない。涙を流して諦めるのは、今じゃない……生き延びるよ。絶対に！」

　オッティアはやれやれと言った表情を浮かべ――

「アリーがそう言うなら、うざかわ系マスコットキャラクターの俺も、とことんまで付き合うさ」

　口の端をゆがめて、にっと笑った。

■説明
　霧の中、残像領域にうっかり紛れ込んでしまった異世界の人専用のユニオンです。
　ユニオン活動は格闘*5です。ユニオン購入は素材+1ですが、柔軟に対応したいです。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

　警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告 警告

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

……るか……えるか……聞こえるか……
……今……私は……世界を超えて語りかけている……
……元の世界……異世界に故郷を持つ者たちよ……
……集まれ……集うのだ……帰還……めに……

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

　ワールドクラッキングを検知しました。
　逆探。対象を特定。シャットダウンします。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


「青空を見たのは、何時のことだったか」
「夕焼けを見たのも、だいぶ前になるねえ」

そんなことを呟いても、得られるものなど、何もないというのに。
自称＜訪問者＞たちは集い、情報交換し、切磋琢磨し続ける。

霧の果てにあるものが、故郷よりも大切なものかもしれないと思い始めたとき、
その瞬間に大義名分は朽ち果て、残像領域こそが真実＜リアル＞なのだと気付くのだろう。

デイドリームビリーバーは死ぬ。でも、せめてそれまでは。