ENo.0256　バルトロイ・クルーガー

結局、コロッセオについてもダイスの戦場についても想像していた中で一番いい結果で終える事が出来た。実力がそうしたのか、ただ単に運や環境に恵まれていたのか――否、きっと、そのどちらかがかけていてもこの結果は生まれなかったのだろうと思う。

結局はこれも日々の通過点に過ぎなかったという事なのだろうか。
けれども、目を閉じるとまだあの時の事が鮮明に思い出される。
伸ばした手は確かに頂点こそ掴めなかった。けれども想像よりも高い所に手が届いたと思っている。

日々進化するハイドラと戦場にライダーとしての自分は随分と古くなってしまったと思っていた。いや、今でもそれは変わらない。けれども、この型落ちライダーでもやりようはあるのだと改めて実感できたのはいい機会だったと思う。

今日もまた戦場へ向かう。未だこの世界はキナ臭い話でいっぱいだが与えられたライダーがするべきは与えられた仕事をこなすことだ。

『おい、バルト、寝てんじゃねーだろうな？』

操縦棺の中はいつだって静かで、さらさらと流れる水音は時にまどろみを与えてくる。そうやって半ば夢の世界にでもいるような気分だったところで、僚機の声が意識を引き上げてきた。

「悪い。寝てた」
『おいおい、余裕だなオッサン。最近調子いいからって油断するなよ？』
「ハッ、そりゃお互い様だ。手ぇ抜くなよ、アテにしてンだからよ」

軽口を叩きあっていけばすぐさま意識は覚めていく。

今日の戦場は少し特殊な場所だ。実験とはいえ気を抜けば、やられてしまうだろう。

望むところだ。

口の端をつりあげて、ぎちりと握り締めた操縦レバーを引き、思い切りペダルを踏んだ。
機体が加速し、霧を裂いていった。

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