ENo.0079　レナンティス

「…………」
。〇（エッタちゃんは、オレ様の事をどう思ってるのかなァ）

腐れ縁？　親友？　それとも、……ただの背後霊？

先日のレンとの会話が妙に引っ掛かるのか、どうしようもなくそわそわしてしまう。
こんなに胸が高鳴るのは随分久し振りのように思う。内心の浮かれ具合が余程表に出ていたと見えて、向かいの彼女が不思議そうに顔を覗き込んで来た。
「何かいいことでもあったのかい。ほら、ぼーっとしてると野菜が焦げるよ」
「え、あ、はい！わわ、悪ィ！」
はたと目の前でいい色に焼けている野菜達を思い出して手前の皿に下ろす。本日の夕飯はジビエの焼き肉である。
その隣で焼けたウサギ肉をおいしそうに頬張りながら悪魔が悪戯っぽい視線を向ける。
「あったんじゃなくて、現在進行形だろう」
当然ながらこの悪魔にはとっくに心情の波がばれているのだが、彼女は悪魔と自分の顔を交互に見遣って眉を潜める。
「？　何の話だよ」
「わあああああなあんでもないなんでもない！！」
「はいみんな手を止めないで。折角の肉が焦げちゃうよ」
「っと、そうだったね」
レンの素晴らしい合いの手のお蔭で彼女はいったん追及を止め、焼き上がった肉を皿に取ると白米もろとも熱そうに口に運ぶ。
「今日の戦場の事を思い出して気が高ぶってるんだよ。ねー、レナ？」
「へ？　あ、うん」
「ああ、それで現在進行形。……ま、お互い明日も五体満足を願おうか」
「……………………」
どうも微妙に誤解されてしまったらしい。
気が高ぶっているという意味では全くの誤解というわけでもないのだが。
ともあれ誤解を解くタイミングを逃してしまって少しばかり後ろめたく思いながら、甘く焼けたキャベツを口に運んだ。

がらくたと、猫と、幽霊と。
特に何もしません。まったり。