ENo.0276　ローデット・ダイス

「勝った……のか」

ふう、と一息ついて目元のゴーグルを外そうとしたところでバルトの言葉を思い出し
渋々戻るまではこのままでいることにした。
ファイトマネーと報酬を受け取れば、いつもより多い金額に満足そうにしていた。
が、受け取る際にこちらを見ながら遠目にヒソヒソと話されるのを伺えば
気付かないフリをして早々とその場を立ち去った。
こういう賭け事は嫌いじゃないが、コンタクトでもつけて誤魔化さなければ次は難しそうだ。
次はミッションリストを見る限り要塞戦だ、でかい戦いならそっちでも稼げるだろ。
人通りの少ない道を歩きながら、霧は少しずつ濃くなっていく。
姿が見えなくなると後ろの方からまるで自分を追うかのような足音に銃声も聞こえた。

「まあ――」

言葉を呟くと同時に金欲しさについてきたのだろう輩は簡単に足に引っかかり躓いて
仰向けになる様子を見ればにぃ、と笑みを浮かべた。

「悪いな、戦いが不得意なのは向こうだけでこっちはヒューマノイドなんで」

並の男以上の体重はあるだろう重さで手加減する様子もなく腹を思い切り踏みつける。
叫ぶ声が聞こえたが、コロッセオはもう大分離れていて人通りもない。
つけてきた人物にとって都合がいいし、ダイスにとって都合がいいのも同じだった。

「狙うんだったらハイドラ乗ってる時の方がいいよ兄ちゃん、乗る度胸と動けたらの話だけど。
災難だったなあ、アンタは『ハイドラの戦いに偶然巻き込まれて死んじまった』
よくある話さ、この霧の中なら。抵抗して銃まで撃ったのに跳弾しちまってついてないなあ」

聞こえているかは知らないけれど、相手の腕を折って武器を奪い
最後に銃声が聞こえると霧が晴れない内に違う場所へと移動した――

とあるものを求める為の集まり場。
それが何であろうと構わない、情報収集の場でもある。


制御*5、ユニオン購入は適当