ENo.0029　猫目 黄金

件名：件名なし
From 黄金
To 琥珀

ねぇ、兄貴。今日さ、変な夢を見たんだ。
あの日の夢を今でも見るんだけど、今日は不思議だった。いつもはとてつもなく熱くて、すっごくいたいんだけど……その日は熱くなかったんだ。むしろ寒かった。僕の腕を見ようとしたけど、なぜかないの。両方ないの。血が沢山出てて、それを見てるだけ。
気付いたら腕無しさんに揺り起こされたんだけど、あれはなんだったんだろう。一番怖かったのは……怖いと思わなかったことだった。

--- 2017.9.22 ---



件名：件名なし
From 腕無し
To 琥珀

なぁ、お前は脚を失ったんだよな。その時さ、痛かったか？
とんでもねぇ爆発があって、一度だけ起きた事があるんだよ。炎の中なのに居たのに全然熱くなくてさ、むしろ寒いんだ。身体からどんどん血が出て、死ぬんだろうなって薄々わかってた。親父もお袋も黄金もいなくなっちまって、そのまま死んじまいたかったから、俺は何もしないでそうしてたんだ。

お前の黄金がさ、変な夢をみたってんだよ。ガタガタ震えながら寒いって、泣いてた。あいつが何を見たのかはわからねぇが……不甲斐ねぇって気持ちだよ、なんせ俺には慰めてやる手が無いからな。
代わりに一緒に寝てやった。アイツの安らかに眠る顔を見て、どうしようもなく、俺の手でぐちゃぐちゃにしちまいたい、燃え尽きて死んじまいたいと、腕の傷口が疼くのさ。

--- 2017.9.22 ---

残像領域に幾つも存在するジャンクヤードのうちの1つ。