ENo.0295　リゼット・フォーレ

「それ以上強くなって、永遠に強くなって……行きつく果ては何なの？」

メフィルクライアが問う。
少し考える。

行き着く果ては、やはり憧れなのかもしれない。
話にしか聞かない、ママの武勇伝のような。
勝ちたい。負けたくない。
少年が父を思うように、あたしもまたママを思う。
あたしにはママしかいなかったから、当然なのかもしれない。

それはごく個人的な、あたしの感情だ。
ハイドラ大隊がどこに向かいどこに行き着くのかは、正直わからない。
そんなことは、いっそあたしだって知りたい。
自分が何に巻き込まれて、どこに向かうのか。

インセイリーはルカ・タオユンという男を紹介してきた。
自分が死んだら頼れと。
死ぬ気なのかと思ったけれど、まあ、あの生きたがりはさほど心配してない。

今回の戦場はルカ・タオユンがいる。
来週の戦場には、そいつについていけとも言われている。

まあ、どこまでやれるのか、お手並み拝見と言ったところだろう。
お互いに。

ガレージ街の片隅に立つ小さな店。

飴色のカウンターはいつ見ても閑古鳥、マスターも留守がち。
キープしたボトルで勝手に一杯。珈琲豆は自分で挽く。
そんな店だが、金銭のトラブルは意外に少ない。
が、酔漢たちの殴り合いは起きないでもない。

紅色の髪の少女がカウンターに陣取っている。