ENo.0070　ユリア・クールハート

『ＴＵＲＮ３１：私の頭の中のＢＡＣＫ ＳＰＡＣＥキー』

「……」
「あっ、ユリア、おはよう！」
「……」
「ユリア？」
「エルシス……」
「何？」
「お前、何故そんな姿をしている？」
「え？」
「どうしてセロもいる？　それにここはどこだ？　この機体は？」
「……ユリア」
「……？」
「エルシス？」
「ユリア？」
「ごめん。何だかぼうっとしていた。私は今、何を言った？」
「ユリア……」
「『トリグラフ』の動かし方、わかる？」
「何を突然。当然だろう。でなければ、起動も出来ていない」
「君は今、無意識にそれをした」
「忘れても、もう身体が覚えてるって事だよ」
「忘、れる？」
「『トリグラフ』のパンドラボックスに仕掛けられた『爆弾』を発見した」
「な！？　爆弾！？」
「もののたとえだ」
「『ザヴェーニエ・システマ』と銘打たれていた。俺達の検索にも引っかからないように、巧妙に隠されていたようだ」
「ザヴェーニエ・システマ（忘却機構）……」
「ハイドラの戦いが激化した頃を見計らって発動し、操縦者の記憶を無作為に消去して、最終的には廃人にする」
「戦場で発動すれば、戦い方を突然忘れて、撃墜されかねない訳だ」
「そんなシステムが、『トリグラフ』に？」
「最初から少しずつ作動するようには仕込まれてたみたいだね。僕達の記憶が噛み合わなかった事も、ユリアの記憶が時折欠落している事も、それで説明がつく」
「どうする。選択権はお前にある」
「『ザヴェーニエ・システマ』には強固なロックがかかっていて、我々にも消去が出来ない。これ以上記憶を失わない為に、『トリグラフ』を降りて戦いを辞めるのも、記憶欠落の危険性を常に抱えて最後まで戦うのも、お前の自由だ」
「……」
「わかりきった事を訊くな」
「私は戦士だ。戦い以外での生き延び方を知らない。生きて帰る為に、この残像領域に私達が呼ばれた理由を明かして」
「戦い続ける。たとえ、記憶がゼロになっても」
「ユリア」
「君ならそう言うと思った」
「君が戦うなら、僕も全力を尽くす。君が忘れるなら、そのそばから僕が新しい記憶を作る」
「だって、僕は君の相方だから」
「エルシス……」
「俺は『ザヴェーニエ・システマ』の侵食を少しでも軽減する方法を探そう。それくらいしか、出来る事は無いがな」
「セロ」
「ありがとう、二人とも」
「……と言った事も、いずれ忘れるかもしれないんだな」
「だが今は、ありがとうと言わせてくれ。そして、すまない。お前達を付き合わせて」
「何言ってるの、今更」
「本当に今更だな」
「一年近くこの状況を切り抜けてきたんだよ？　何が起きても、僕らはきっと乗り越えられる」
「その為の、『トリグラフ（三位一体）』だよ」
「そうか、そうだな」
「では、行こう。いつも通りに！」

To be continued...

Reinclaft-Millia Service

数年前にできた、残像領域の片隅の整備屋。
相場よりほんの少し高い値段で、ウォーハイドラのみならずライダーも整備する。
早い話が、機体のメンテをしに来るついでに、店主が常々作りすぎる飯のおこぼれにありつける整備屋である。
飯だけの利用も歓迎だが、この店にはメニューはない。店主が作りすぎたその日の飯が出されるだけである。

！店および店主（ENo.4）の既知可
！ユニオンに参加せずメッセで利用する体も歓迎
！ロールするキャラを推奨するかも

細かいこと：http://midnight.raindrop.jp/milliapede/union.html