ENo.0688　チェシカ

戦績は散々だった。
それこそ、最初についていたパーツをそのまま使ったほうが良かったと思える程に。

整備を任されてなんとなくで組んだ自分の機体は、最後まで残りはしたものの思っていたよりも動けなかった。
何が悪かったのかわからない。
そもそも、この機体がどういう仕組みでどうやって動いているかも自分にはわからないのだ。

スピーカーは今日も静かで私に何も話しかけてこない。
愛想を尽かされてしまったのだろうか…。
自分や両親はどうなってしまうのだろう……。
押しつぶされそうな不安から逃げるように、白い部屋の隅に座り込んだままひたすら天井に視線を向ける。

このままで居ても、時間が来れば次のゲームが始まってしまう。
そうしたら、また…あんな無様な格好を晒してしまうのだろうか…。
どうにかしなければ……でもわからない事だらけで、何がわからないかすら理解できていないのだ。

知らないことを知って、出来ることを出来る限りやるしか――ない。

「この間の…映像をください…私以外の全部のゲームの分も。
それと、クジラさんの整備の説明書も…あればください。
整備できるパーツの種類も全部教えてください。

ゲームに関係する資料は…あるだけください！！！！」






6回目のゲームが始まるほんの少し前

幾つのもの光粒子モニターが文字や図を映し出し、チカチカと瞬いている。
その中心に、両手で厚手の紙の資料に目を通すような仕草をしながら整備室に座るチェシカの姿があった。
感情が消えたその目はクマをつくりながらも尚、手元を見つめている。


(失敗できない……私がちゃんと、ちゃんとやらなくちゃ……。)

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