ENo.0160　ルーゼンエッタ

（http://mistofwar.kitunebi.com/M_o_W_4/032/RESULT/c0160.htmlからの続き）

「ーーどうしたの？ ルゼ」
ヴェロニカの困惑した声にもルーゼンエッタは答えない。 マリア＝ローザの操縦棺に何かから逃げ込むようにして乗り込んできたルーゼンエッタに、ヴェロニカは正直に言えば困り果てていた。ルーゼンエッタが操縦棺で時間を過ごすのは今ではいつものことであったが、大体がラジオを聞いたり本を読んでいたり、ヴェロニカと他愛のない話をしていたりで、何かから自分を守るように蹲って操縦席にぴったりと収まっているのは初めてのことだ。その状態が、一時間も続いている。
「何があったの？話して頂戴？そんなに黙っていても解らないわ」
出来ることなら抱き寄せて額を寄せ視線を合わせたいところだが、ヴェロニカには既に肉体はない。だから、辛抱強く声をかけるしかないのだ。
「ルーゼ」
「ーーウォルおじ様が」
ポツリと、ルーゼンエッタが口を開く。
「この戦争が終わったら、ロンは回収されるって。ロンが納得しているなら、それは何も問題ないって」
「ーーーーーーーーーー」
そうだろう。ヴェロニカはこのマリア＝ローザを作った組織に回収されるなら、それで構わないと思っている。だから、抵抗することはない。
だた、問題はーー。
「ねえ、ロン」
縋るようにカメラを見上げてくる、ルーゼンエッタでーー。
「 “貴女は私を裏切らない”わよね」
「ーーーーーーーーーー」
それにヴェロニカは答えられなかった。ヴェロニカは既にルーゼンエッタを一度裏切った。裏切っって、欺いて、独りにした。それを語らない今も裏切っていると言ってもいい。
勿論、言うべきだとは思っている。
だがしかし、今語るべきなのだろうか。真実を、これからの自分が考えている展望を告げていいものだろうか。
「なんで答えてくれないの？」
か細い声を出し、祈るように見つめてくるルーゼンエッタにヴェロニカは、決めた。
ーーきっと、語るなら今しかない。
「ルゼ。よく聞いて」
「…………」
「あそこから……組織から私たちが抜け出したのはーー」
「………」
「私が、貴女が廃棄されることに耐えきれなかったから。私が――“ヴェロニカ”が、ルゼ。貴女に生きていて欲しかったから」

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