ENo.0261　Solitus

カナエはアグリオ・ブリッツと名乗る彼のことを全く知らないわけではない。
共にソリトゥスを操り、共に生活をし、共に戦場を駆け抜ける相棒であるソーナの口から、彼の話はたびたび耳にしていた。

戦場についての知識を持たないソーナのかわりに、様々な決定権を握っているカナエが僚機を組むことを決めたのは、例の作戦が終わってからだった。
ハイドラライダー同士で集まって実行された、再起動と呼ばれる現象を意図的に引き起こすというものは、カナエにとって最高の作戦だった。
何回数を重ねることができるか、どれくらい対応することができるか――様々なハイドラライダーたちと共に、自分自身の命をベットして参加したそのギャンブルは、カナエに程よい興奮と楽しさを与えてくれた。
そのときに思ったのだ――やはり、共に戦場を駆ける仲間がいるのは、いいものだと。

カナエとソーナが操るソリトゥスは、狼の姿をした索敵機だ。
どれだけ銃火器を積むことができても積極的に前に出ることを得意とした機体には劣るし、銃火器を積むということは索敵機の武器となるレーダーを搭載する余裕がそれだけなくなるということでもある。
ウォーハイドラは無限の可能性を秘めた機体だ、索敵機から攻撃機に急に転身することもできるが、今までずっと索敵機として生きてきたソリトゥスがそれをするには、負担があまりにも大きい。
事実、カナエたちよりも前にソリトゥスに乗っていたハイドラライダーは、それに失敗してソリトゥスを大破させている――カナエはそれと同じようなことはやりたくない。
ソリトゥスを大破させずに、この戦いが終わるまで安全に生き延びようと思うと、背中を預ける仲間がいるほうが安心できるという結論に至ったのだ。

そんなときにソーナが持ってきた、僚機申請の話。
カナエが食いつくには、十分すぎるタイミングだった。

これからの戦いを一人、想像して口元に笑みを浮かべる。
戦場に出る前の時間、鮮やかな森の色をした髪の彼を見つければ、カナエは真っ先にそちらへ足を進めていった。

「やあ！　ハローハロー、はじめまして！」

戦場を駆けるあなたの目となり、耳となろう。
きっと残された期間は短いけれど。