ENo.0509　闇

【業務報告】
[状況]
　微々たる改善。だが……あくまでも結果上は、というだけであり。意図的な改善策の齎したものだとは言い難い。
　実質は、配置人員による差と見るしかない以上……結局は、己の存在意義への疑念は拭えぬまま。
　僚機、一同……と、称するべきか……？
　――は、主搭乗者の精神面を考慮し、一時的に乗員交代を行った模様……交代要員は、管制AI意識複製体……本体との記憶同期は続けて行くと推測するが……肉体自体は完全に別である為、別個体――新しい構成員、かつ、副搭乗者として認知する事とする。
　兎角、戦績は概ね横這い。相変わらず優秀だ。
　主搭乗者の精神状態は……直前は、もはや、最低としか言いようがない。
　出撃前、縁者復帰の報せが届いてはいる故、それによる作用が如何様なものか……一先ず、注視。
　……それはそれとして。
　報告するまでもなく、現行、世界そのものの命運が掛かっている模様ではあるが……
　……如何せん、やるべきことが一辺倒な手前、真新しい情報はない。
　状況を継続。

[配属先/指示内容]
　第14ブロック・横たわる闇の未来[フラッグ]
　……春を迎える為に。
　地上戦力21、航空戦力6。電子・物理・火炎が相応、霊障が少々。

[身体状況]
　依然、注意状態発現中。総合的には、改善傾向……の、はずだが。進捗は著しく鈍化。
　基礎体温の振れ幅、代謝維持消耗率横這い。アンプル本数・種類と濃度は前回分を維持。
　強化筋繊維・神経系は融合手術施術前の水準まで復調。
　一方で、不明な触覚信号再発。拒絶反応抑制薬を更に増分し、経過観察。
　睡眠質……段階的、悪化の兆し。不眠対策に強制意識遮断を数度利用。
　他、足部縫合部損傷、頸部・回腸部付近損傷への処置は未だ手付かず……引き続いて、鎮痛剤にて対処。
　……また、強制意識遮断中に、頸部・回腸部付近への外因性損傷追加再発生。該当時の記録なし。
　二次被害と思しき消化器系の機能低下発生中。
　止血剤と鎮痛剤、整腸剤、融合部の一時操作にて場当たり対処。

[機体状況]
　良好。
　軽多脚仕様に再編。FCS、ブースター2基、術導肢、ミサイルを、霊送箱1基、エンジン2基、パイル2本に換装。
　霊障防御・粒子防御がそこそこ。他は無きに等しい。

[備考]
　有るだけ簪を挿した。
　……体躯調整室の監視最強化。未監視区画にも監視導入……間に合わせだが。
　所感あり、言語・単語語意についての調査と思索と……ヒト科適応臓器培養用に装置改造。
　諸々に、存外、時間を喰われた。他の細事が碌に手付かず仕舞い……

[えびっこのこと]
　妙に御機嫌に挟んできた。結局、機嫌に関わらず挟むのか。
　鋏に毛が付いて取れないのを気にしている様子だったので、取ってやろうとしたら更に挟まれた。