ENo.0166　ステラ＝アレグレット

ついにこの日がやってきた―

私、ステラ＝アレグレットは今日からハイドラライダーとして戦場を駆ける。

私がハイドラライダーになったのは、5年前の"あの事故"が原因だ。
頭を強く打ったからか、あの日のことをハッキリと思い出すことは出来ない。
ただ、ぐしゃぐしゃに潰れた手足が、残酷に事実だけを私に残していった。
そう、あの事故で私は四肢を失ったんだ。

それでもなんとか命だけは助かった私だけど、治療費やらで文無し。
仕事にだって戻れるわけもなかったし、結局もうこのまま死ぬんだなって思ってた。
実際、親友が私の為に義肢を用意してくれなかったら、もうどうしようもなかったと思う。

勿論、義肢だって無料じゃないし、いくら親友だってそんなものポンッと出せるわけがない。
私がこの義肢を貰うためには条件があった。

それが、"最新技術を搭載した義肢の動作テスト"と"その義肢を使ったウォーハイドラの運用実験"
要するに人体実験ってやつだ。

私には他に選択肢なんかなかったし、それでまたちゃんとした生活が出来るっていうなら全然オッケー！
戦場に出るからには死ぬ可能性だってあるかもしれないけど、それでも何もせずにただ死ぬのを待つだけより全然マシだ。

それに、ちょっとだけ楽しくもある。
私だって、元はと言えばハイドラ技師。
こんな最新鋭の技術の実験が出来るなんて、楽しくないわけがないよね！



―――



ついにこの日がやってきた―

ステラがハイドラライダーとして戦場に出る日が―

私、ベアトリス＝タチェットが、ステラに義肢を渡してから5年目……
今まで義肢の動作チェックやシミュレーター等を使った実験に付き合ってきたけど
今度は実戦……安全の保障されない世界での戦い……

あの事故で彼女が四肢を失った時、私はただ彼女の為にと思って義肢を用意した。
今、彼女が戦場に出るこの時を迎えて、少しだけ後悔してる。
私が余計なことをしなければ、彼女はこんな戦いに身を投じないで済んだのではないか。
彼女にこんな真似をさせないで済む、もっと良い方法があったのではないかと。

私はハイドラ技師として、常に最先端の研究に加わってきた。
彼女の義肢に使われているのも、私の研究で副次的に生まれた枝葉の技術。
それでも、彼女を救う為には、資材も、人手も、何もかもが足りなくて。
"人体実験データとの引き換え"その条件を飲むしかなかった。
自分の開発したものですら自分で扱えない……自分の無力さに腹が立つ。

だからせめてサポートしたい。
彼女がこの仕事を終えて、無事に元の生活に戻れるように。