ENo.0092　ジュネリア＝ハーヴェスト

初回の出撃を終えると真っ先に自室へと戻る。
戦場は完全にただの簡易武装のテストにすぎなかった。
ほとんどのライダーは本気で動かしてすらいないだろう。

各企業への定例連絡を済ませつつ端末の読み上げ装置を起動する。
読み上げるファイルはライダーのリストだ。
要塞調査と聞いて普通のライダーばかりが集まるわけがない。
その中に目的の相手がいればそれでよし、そうでなくとも協力者になるような相手を見つける必要がある。

もっともジュネリアが追い続けている相手は名前どころか顔もわからない。
あるのはただ死に掛けた自分を見下ろす2脚のハイドラのシルエットの記憶だけだ。

やがて端末が読み上げ始める。
ジュネリアにとっても3年、こちらでは5年たっているのだから、そう同じライダーには………。

「……何人かはいるようだな。ちょうどいい。」

5年前のハイドラ大隊では知人が多いとはいえなかっただが、それでも何人か覚えのある名前があった。
そのうちの何人かをみつくろい、住所と所属ユニオンを確認する。

現住所を公開しているようなライダーのほとんどはユニオンの代表だったり店舗を持っている者ばかりだ。
残像領域は何かを隠すのが外に比べると難しいとはいえライダーの登録データには多くを記載することを嫌がるものもいる。

「……そもそも同名だからといって面識のある本人とは限らないが。」

以前のような疑心暗鬼は首をもたげないが、それでもその考え方に一人で苛立つ。
カツカツと指先で端末をたたくと、携帯端末にデータを送信しリストを閉じた。
そのまま5年前にも利用したシステムをいくつか開く。
相変わらず企業の入れ替わりが激しいようでいくつかの自動処理システムは稼動していないようだ。
ひとまず僚機のマッチングシステムに登録する。登録対象は、ユニオン所属者。それ以外はフリーに設定する。

理由は簡単だった。ユニオン所属者の僚機ともなれば情報収集がしやすい。
たとえそれが一度限りの契約だったとしても、この残像領域ではかなりの意味をもつのだった。

ふと端末に走らせていた手を止める。
この3年であるひとつの疑問に行き当たった。
もっと早くに考え付いたであろう疑問。

ある意味それからも逃げ続けていた疑問。
些細なことで苛立つ、本当の原因。

止めていた手を再び動かす。
今度はガレージを呼び出した。
今回報酬代わりに渡された簡易パーツの処分と次の戦場へのアセンブルを整えなければならない。

必要な日用品はそろえさせているが、中心地やマーケット、ユニオンの設立による市街地の変化も確認しないといけない。

先ほどのみつくろった相手にもコンタクトを取らなければ――――

今はやることが多い。
まだ、やることがある。

まだ。

ただ射撃を行う