ENo.0071　アキラ・ハリアエトゥス

北の果ての遺跡回廊の地……“未踏領域”へと足を踏み入れる直前で、トレーラーを停車させる。この先は戦場、最後の確認を行う。

まずは“パンディオン”。俺のガレージから車で移動できる範囲内で集められるジャンクをかき集めて最低限戦えるようにはした。
飛行ユニットとブースターユニットはそれぞれ2基。ブースターはエネルギー消費を考えてミドルクラス。
脚部は無く、そこに10番目のユニットとして飛行ユニットを据え付けてある。飛行性能は数値上では410、2基積んでいるにしては心もとない。
武装はパルスガンとパンツァー・クリンゲ。重量との兼ね合いでこれ以上強力な兵装というのは難しいが、連動攻撃が可能なら問題はないだろう。
FCSは搭載したが、これを有効に扱いきれるかは定かではない。もっと強力な単発の射撃兵装があればあるいは…………
後はグリスター・ユニットだ。かつての大戦時にはついぞ搭載しなかったが、軽量化のために止む無く搭載することにした。
腕部がないためリロードが効かないのが難点だが、予備の弾薬はしっかりと搭載してある。尽きるほど撃つことはない、だろう。

──完璧には程遠いが、俺が乗って動かすには十分な物が揃った。
パーツのマッチングを確認し、整備点検を済ませて車に戻る。


ふと、どんなライダーが集まっているのかということが気になった。
“禁忌戦争”で多くのライダー──俺も含まれている──が行方不明になったと言うが、“未踏領域”へと再び姿を見せているかもしれない。
見覚えのある名はないものかとタブレット端末を立ち上げ、登録済みのライダーの一覧を確認する。
……一方的に贔屓にしていた整備屋のライダーの名義で立っているユニオンがあった。あの精度のいい操縦棺がまた出てくれるといいが。
……死んだと聞いたライダーの名を見つけた。死後脳髄が取り出されパーツ化されたと聞いたが。
……何度か戦場を共にしたライダーの名を見つけた。言葉をかわしたことはないが、良かったと思う。
……俺の名があった。いや、これはどうでもいい。

目録をスクロールするうちに、一つの名前に目が止まる。
ジュネリア＝ハーヴェスト。“禁忌戦争”の最終盤で僚機を組み、最後の決戦を最後に解散したライダーだ。
実際には俺があのリグ・ドゥルガーの光に巻き込まれて行方不明になったために解散を予定していなくとも自然解散となったわけだが。
登録情報を読むに、ジュネリアは“禁忌戦争”は無事に終えたようだ。その後暫く姿を消していた、とはあるが……何かしら事情があったのだろう。
彼が戦う理由は知らない。知ろうという気もあまりないが、かつて肩を並べた相手が無事に生きているというのは嬉しく思う。
挨拶くらいのことはしておくべきか、とメッセンジャーを立ち上げる。

そういえば、俺が使っている端末は５年前と同じものだが未だに使えている。
ハイドラライダーの管理システムやハイドラ自体の仕様、そういうものは特に変わっていないらしい。

簡素なメッセージを送信し終え、ハンドルを握る。
進むは“未踏領域”。……俺が勝手に呼んでいるだけだが、何かいい呼び方はないだろうか。
やることは５年前と同じだ、ただ戦い、ただ生き残り、ただ進む。
その果てにあるというドゥルガーを勝ち得て何をするかなど今は考えていないが……そうだな、邪魔な枝でも刈り取って領域の空でも飛べればいいが。

廃棄された様々なものが集まり、
それを目当てに人々が集まり、
集まるために様々な建物が増えていった地区。
ハイドラパーツの素材になりそうな質の資材も転がっているようだ。







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