ENo.0125　偽りの射ち手

＜いい出来じゃないか、HackTeckの傑作機だ＞

＜最近反応が鈍いぞ＞

「一人じゃない時が増えたんだよ」
自分以外には聞こえるはずのない声、見えるはずのない姿へ思わずそう返した。……トンネルの中だ、誰もいないとはわかりつつも誰かに見られていやしないかと周囲を確認する。

護衛として最低限のスキルを確認したかったのかいくつかのテストを受け、上々と評価されてからのハイドラ製作依頼は実に迅速であり設計図を出してものの数日で組まれていた。……どのパーツもこの世界にとっては（ある一つの例外を除き）ほとんど特注パーツだろうというのに、あちらの技術力も相当なものだろうと伺える。

「しかし、何があって掘削機を選んだの」
本来は武装の無いレーザー掘削機。……"社長"がその設計図をあえて出してきたことに、珍しくこちらから問いかける。

＜姿を見られてはいけないだろう、スポンサーもいるというのに＞

コックピット（みたいに改装された操縦席）を覗き込めば、一本のプラグが天井から伸びていることに気付く。
「このプラグは？」

＜あとで嫌顔でもわかるさ、ははは＞

……社長の考えることは、今でもよくわからない。

それは地中に出来た、真っ直ぐに伸びる洞窟のような空間だ。

一つ明かりを付けたのなら、きっと貴方はそれが人工のトンネルのようなものだと気付くだろう……そう、丁度中型のハイドラが通るほどの。

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