ENo.0123　Rache

【破損したボイスレコーダーに録音された一部】


『あ、あー……これで……聞えているんでしょうか、……いえ、えっとこれは……ロクオン？されているって言ってましたね。』

『ね、ねえ？そうだよね、―――-、って、もう、ちゃんと聞いてよ！……、……。…………仕方ないですね……とにかくこれは音を記録してくれると、親切な方が教えてくれました』

『私、……私たちは、……気づいたらここに居ました。ほんのちょっと前までは、みんなと……居たはずなのに……塔を……、とても高い塔でした。それをみんなと一緒に、一番上まで。……とても楽しかった。……そういえば、塔へは気づいたら居たんでしたっけ。』

『みんなは、……無事なのでしょうか。ここへ来たのは私たち２人だけのようで……、それにこのような霧の深いところは、塔にはなかったはずです。』

『ここには見たことがないものばかりです。……あ、でも、この……はいどら、というものは少し……塔の一番上に居た……機械に似ているような気がします。それ以外も形は様々なようですが…。この、ボイスレコーダー、というものも気づいたら持っていました。……ここらへんでは特別珍しいものでもないらしいのですが、……持ち主も居ないようなので、使わせて頂いてます。』

【数十秒の沈黙】

『……どうして私たちがここに居るか、どうやってきたのか、帰る方法も、……うん……なにもかもがわかりませんが、とにかくこんなところで止まるわけにはいかないんです。』

『…………私は、いつか帰らないといけない場所がありますから。』


『あ、それにみんなが無事か、気になりますから！』

『―――――、――――――、　きっと聞えないでしょうけど、私は無事です。どうか心配しないで。きっと帰ってきます。』


『…………カヴェント、』
『ん。』

『それじゃあ、ここで一旦終わりますね。』
『…………、………。』


【ノイズが強くなる。】
『霧が――――――、いで――――――』
『――――――、』


【再生終了】

必要最低限の整備が出来そうなドックに、パイプ椅子がふたつあるだけの簡易的な休憩所。