ENo.0130　かもめの亡霊『モーヴェ』

サラミスの船体の一部に白いふわふわのなんかが生えてるのを確認した。カビっぽいような、羽枕の中身みたいな。なんでも最近、バイオ兵器とはまた別にこういう菌類とかウィルスなんかをハイドラの武器として使う技術が発達してるってゆーんで、とりあえず培養器を買って様子を見てみた。

培養器からふわふわのなんかが敵機に付着すると、『取り憑かれたように』敵機の様子がおかしくなってすげー面白かった！…いやぁ？オレもモノに取り憑くとか、やろうと思えばできるし！たぶん。 とりあえずこれで今週のサラミスのアセンブルレポートおわり。来週までには彼女《コイツ》に見合ったでっけえ大砲を買ってやろうと思う。高圧のエネルギーに乗せてもウィルスって死なねえのかな。

……………
ジャンク品置き場でゴロゴロしてたら、いつのまにか色んな奴が集まっていた。ハイドラに宿る亡霊、絶対詐欺かなんかに合ってるやつ。いや、マジで突然でかいエンジン2個送ってきたりすんだもん。警戒心ないのか？オレ不安になるぜ。
…あと、めっちゃ気さくで褒め上手（嬉しくて変な笑い声出ちまった）なやつ、そして…兄ちゃん。
……なんだか五年前の姉ちゃん達のことを思い出す。残像領域の時間は時に、バラバラに流れる。5年だとオレは思っているけど、姉ちゃん達にとっては何年なのか、今どこにいるのかは、今はちょっと有耶無耶になってしまった。

あの時と同じくらい、オレは上手くやれるかな。家族みたいに、仲良くなれたらそれが一番いい。
あーあ、クソ兄貴、カレー以外のレシピなんか残してないのかよ。味を再現ったって食ったの何年前だと思ってんだ。

壊れてしまった、もはや時代遅れ、彼氏にフラれた腹いせ。
あれこれの理由で積もったジャンク品の山の中。
打ち捨てられたようで、実はとても手入れの行き届いた三段櫂船型ハイドラが一機。
ある一人の幽霊が、そこで暮らしているのだ。


「メシと寝床？必要なら出すけどオレあんま料理上手くねえよ」