ENo.0398　“Neon”

　
「……さってと」

ゴーグルを装着し、ジャケットを羽織る。
一通り装備を確かめれば、同乗者の少女を振り返った。


「アウラ。準備はいいな？」
「いっつでも！」

アウローラのテンションが高いのはいつものことだ。
存分に“ぶっ放せる”タイミングで、彼女が張り切らないはずがない。
それでも今日ばかりは、常よりその声に気合いが入っているように聞こえる。
よし、と小さく頷きを返すと、少女はにんまりと笑みを笑みを深めてグランを見た。


「……んだよ」
「んふふー。グランがそういう風に聞いてくるの、珍しいなーって」
「…………」
「やっぱり、今日はみんな──」

皆まで言い切られる前に、ふいと踵を返した。そのまますたすたと“Neon”のほうへ向かう。

「とろとろしてんな。乗り込むぞ」
「あーっ、ごまかしたぁ！　照れなくたっていいのにぃ」

ハンガーの中に威勢のいい声が響く。
抗議するような物言いに反して、その声音は妙に楽しげなものだ。
額のひとつも弾いてやろうかと思ったが、それも逆にわざとらしい気がして、やめた。


ちらりと見やれば、他のライダーたちも各々機体に乗り込む様子が見える。
常ならば二手に分かれる行く手は、今日は同じ方向だ。


「…………別に、」

それが何というわけではない。
いうわけではない、が、


───今日は、全員が同じ戦場に出る。

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