ENo.0325　"Black Star"

　【9週目】

　あれから、戦闘の予告された日以外は遺跡のあらゆる場所でラジオ波を観測することが続いた。この遺跡の地図すら買い、そしてその紙面上は罰印で埋め尽くされつつある。我ながら、病的だと思う。あるいは側から見れば重度のマニアだろうな。溜息をつき、ペンを投げ捨ててベッドに倒れこむ。

　そろそろ諦めるべきかもしれない。それよりも、最近は何故ここまであの一瞬だけ聞こえた通信に拘っているのか、そういうことばかり考えている。分からない。あの放送がどこかの戦場からの混線だったり、いたずらという可能性だってある。だというのに、あの通信のことがずっと引っかかる。何か、思い出せそうなことがある気がする——ふと、テーブルに投げ捨てたラジオが目に入った。

　そういえば、このラジオはいつ買ったのだろう？ 前に一度、ゴミ箱に投げ捨てて、そのままどこかに廃棄したはずだ。何か、ぞわぞわとする感覚が身体の芯を走り、飛び起きるように、それに手を伸ばした。



　ラジオを掴む。そして、私……俺は口を開き、——

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かつて残存領域に存在した兵器研究開発機関らしいが、正式名称は忘れ去られ、その標識も掠れてほとんど読み取れない。そのため、資料に残されたそれっぽい名前が当てられ、トレードマークも掠れたものをそのままコピーして使っている。当時の人員は全て撤退してしまったが、旧基地に残された試作品や資料は未だに多く残っている。少なくともしばらくの間は、ここの遺産が尽きることはないだろう