ENo.0052　ギベオン

「睡眠の質が変わったと言われたらそれまでだが
お前も此処で夢を見たのか」
「う、うん。 ただ、僕は昔の…記憶を失う前の記憶らしいんだけど」
「あー、お前地雷踏んで体と記憶がぶっ飛んだんだっけか。

改造すりゃ良いのに」
「ぴぇっ!? え、えーとそれは置いといて夢の話をしたのは?!
な、なんか思い出しました??」
「あぁ、そうそう…」

　乾ききった植物を紙の上に砕いて乗せ、軽く火で炙れば出た煙を包むように、筒状に丸めた『其』を吸い出した。
　ナナキは『其』を手製の煙草程度の物としか思っておらず、また、ギベオンも詳細は教えず『吸うと落ち着く、癖の強いモノだ』としか言わない。

「俺にも、相方の夜鬼はいた」
「えっ」
「殺されたがなあ。死に目は見れてねえけど」
「(そ、それって…)」
「その時、俺は手足は切り落とされていたし目隠しもされていた。
それでも横に相方が来たのが判ったのは、いつものようにきゃんきゃん吠えなかったのと
『これ』の匂いと血の臭いを嗅ぎとったからだ」

　そう語りながら紙筒を握り潰した。

「手癖も愛想も悪い奴だった」
「そ、そうだったんだ…」
「だから俺が組んでソレを目立たせないようにした」
「えっ」
「虚勢張ってんのもろ判り、根っこは真面目で常識人だ。
お前みたいにな…ってクローンだから同じで当然か。
…ともかく、ガキが悪ぶっているだけじゃあ悪ィ大人に利用されるだけだ。
潰されたガキは何人も見てきたから判る」
「その夜鬼くんを保護したってこと…?」
「そういうことだ。 まあ逆に俺も世話になったがな。
そして会わなくなってから、そいつといた方が気楽で良かったって気付いたぜ」
「そうなんだ…」

此処には肉体のアセンブルがおかしい奴がいる