ENo.0005　パアム・ライザ

『――――――ただいま留守にして「はい、どうも、定期ですね！」

ヘッドフォンから流れる残像領域からの音声に、一瞬心がざわつく。が、すぐに持ち直し、思考を切り替える。

「……はいそうです。それで、先輩。ここ二週間ほど、ずーーーっと、ランダムな自動音声をループさせていたのは、どういう了見で？」

「……バレていました？」

バレいでか。
理由を簡単に話してくれるとは思わないが、分かりやすい嘘でもまあ、適当に修正しておいてやろう、と言葉を待つ。

「いやその、なんといいますか」

「はい」

「思った以上に時間がかかったというか。技術者魂に火が点いたと言うか」

「……はい？」

思わず、素っ頓狂な声で聞き返す。嫌な予感がする。技術者魂とか、この類の言葉を発する人種は大概やらかす。
否、この場合はやらかした後だろうか。

「いや、ですからね！薄装甲は手に入ったんです！ですけど、その。性能を確認する前に、作りたいものや試したい装備が後から後から湧いてきまして……」

「は　　い　　？」

「えーっと……すいません、道草を食いまくって、絶賛放蕩中でした……。」

思わず上を向いて天井を見上げ、大きなため息と共に足元へ視線をやり、頭を抱える。
逃亡とか、亡命とか、何か大きな事件に巻き込まれそうだから母親を心配したとか、そういう理由で定期報告の音声を偽造したわけではなく。

……とどのつまり、長期休み明けの宿題を、家に忘れたと嘯いている学生のような。

「ごめんなさい！その、何でも――はしませんけど、できる限りいろいろと善処します！」

「子供ですか、貴女は！！！」

「いや、その！ちゃんと薄装甲は確保しましたし、性能も変わりないということを確かめました！」

「貴女は！自分の！立場を！！どれだけ！！心配したと！！」

「――心配、してくれたんだ？」

勢いでまくしたて過ぎた、のだと思う。耳から入った言葉を一度咀嚼して、それから自分が言った言葉を記憶から引っ張り出して、もう一度それを認識する。

「――――知りません！！！」

思い切り、わざと音をたてるように通信を切ってやった。
耳がキンとなり、一瞬、何も聞こえなくなってから、やがて周囲の雑踏が聞こえ始める頃になって、はじめて、耳がとても熱くなっていることに気がついた。

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「……怒られた。」

「お前が悪い」

「ですよね。はあ……何か埋め合わせを考えませんと。」

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それは大きな倉庫。―――ただし外部から何か引きちぎられたような跡がそこかしこに見て取れます。

外からひとまずの補修がされており、ハイドラの整備施設などが備え付けられているようです。

また、倉庫の脇には、油臭いパイプベッドが備え付けられたバラックが存在しており、時折、珈琲の香りが漂ってきます。
「……もうちょっと居住性高めましょうか。」



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・射撃特価ユニオンです。

・一応参加自由ですです。