ENo.0317　サリィ・スティラ

オトナはこわい。

サリィにそう思わせたのは、大人達か、サリィ自身のせいか、
それともこの霧の世界のせいだったでしょうか。


みすぼらしい見た目のこどもは、この世界では珍しくはありませんでした。

様々な世界から迷い込んだもの、もともとこの世界にいたもの。
戦争の続くこの世界で、親をなくしたもの、親がだれかすらわからないもの。
そういったこどもたちは、歴史の表に出てくることはなく、
疎まれ、あるいはいないものとして扱われ、あるいは忘れられてゆくのでした。


灰色の髪にはつやがなく。服は白い布に穴を開けたような簡素なもの。
一目にわかる、みなしご。


お金があれば、大抵のものは手に入ります。
エンジン、兵器、企業の信用。
お金がなければ、大抵のものは手に入りません。
食べ物、飲み物、その日の寝床。


手に入らなくても、手に入れなければならないものがありました。
手に入らなくても、生きるためにしなければならないことがありました。



「こンの、盗人（stealer）め！」



たいせつな僚機、たいせつなおともだちともまだ出会っていない、少しだけ昔のお話し。