ENo.0440　ヴィラカティ

「外で妙な格好のひとたちが歩いているの」

ヴィラカティは真剣だった。
ぼうっとした顔をしているが、真剣そのものだった。

「妙な格好？」
「そう　耳や尻尾を付けていたわ　人の子が」

残像領域にはあらゆる世界から人が訪れる。
文化の違いがあれば、その姿を形成する根本から違うことだってある。
そんなことはトマスには分かっていた。
ヴィラカティにだって分かっていた。
「そうか、今日はハロウィンだったね」

「ハロウィン？」
「元はね、わしらの世界のお祭りみたいなものさ。」
「物乞いをしてたの？」
「そこまで神妙なものじゃないよ。どうだい、ヴィラも行っておいで」

ヴィラカティは少し悩んだ。
「でも何になればいいのか分からないわ」
「フム」トマスも少し考えた。
そうして格納庫の大窓から見える外を二人して眺めてみた。

「そういえば、オオカミ男とか吸血鬼とか…ゾンビとか、
　自分の世界のバケモノになっていたね。ヴィラの世界には居たかい？」
「いたけど…」
「それに化けて驚かせてみると良いのさ」

ヴィラカティは少しだけ渋い顔をした。
それでも「分かったわ」と了承した。イヤな訳ではない。
どうやって「バケモノ」を作るのかを考えていたのだ。



＊＊＊



「…お姉ちゃん　ソレなに」
「鉄の民…」
「…なにソレ…」
「鉄が採れる山にいて　一つ目なの」
「ふぅん…」
「お菓子くれる？」

相手は怪訝そうな顔をしていた。
お菓子は貰えた。